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200w REVIEW '19 『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』

マルタは「嘘をつくと嘔吐する」。 それが彼女の生来の“優しさ”か、ギミックか。 複雑に入り組む屋敷の歪な寝室は、 ハーラン自身が一筋縄ではいかないひねくれ者と同時に、 クリスティの「ねじれた家」の舞台を彷彿させる。 家族の証言と、それを覆す回想もミステリーの定番だ。 「金を与える代わりに、家族を支配していたのかも」。 その…
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200w REVIEW '19 『テッド・バンディ』

犯行は一切、描かれない。 「希望を捨てない」。 法律家を目指すテッドは、自信満々に“無実”を主張し、 その情熱は犠牲者たち同様、観る者をも当惑させる。 台所で包丁を片手にリズとモリ―の朝食の支度をする テッドの危うさに震撼する。 市井の幸福と殺人の狂気は表裏一体だ。 衝動的に裁判所の窓から飛び降り、 独房の換気口を刳り貫…
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200w REVIEW '19 『ザ・ピーナッツバター・ファルコン』

ザックは独立心旺盛だ。 身寄りがないと高齢者用施設に閉じ込められ、 大人しく従っていられる訳がない。 自らの居眠り運転による兄の事故死以来、 罪悪感で腑抜けとなったタイラーは、 そんなザックの情熱の恰好の受け皿だ。 障害者と欠落人間の「無法者コンビ」の旅は、二人三脚さながらだ。 ディープサウスの湿気のようにまとわりつく …
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200w REVIEW '19 『ラフィキ:ふたりの夢』 Part.2

ケナが自信なさ気に俯くのは、 彼女自身が男尊女卑の先入観に根差した偏見に囚われているからだ。 ブラックスタはバイクの後部座席に座らせた彼女が、 自分の妻となって家庭に収まるのが当然と断言する。 愛するケナの意志を問うこともなく。 誰もが顔を見知ったこの町の、何というコミュニティの狭さだろう。 瞬時にして噂が広がるこの土地から…
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200w REVIEW '19 『冬時間のパリ』

SNS全盛に眉を顰めるレオナールに、 「アンシャン・レジームの時代と同じ短文だ」と 笑い飛ばすアランもまた、デジタル書籍の台頭による 紙の出版文化の岐路に立たされている。 移ろいがちな時代の趨勢に折りあいをつけて、人は生きている。 テレビの連続ドラマの出演に飽き飽きしているセレナは、 それでも舞台女優だった頃より知名度を得た…
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200w REVIEW '19 『今さら言えない小さな秘密』

“不運な宿命”。 真実を打ち明けると、突如として雷鳴が轟く。 父はその落雷で亡くなった。 「自転車に乗れたら一人前の男」。 その代わりラウルには修理工としての技量と知識がある。 「一生自転車に乗らない」。 マドレーヌの両親が自転車事故死した過去が幸いしたとはいえ、 これまで隠し通せたことが奇跡だ。 尤もらしい“英雄”の逸…
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200w REVIEW '19 『オルジャスの白い馬』

少年の午睡のまどろみのようだ。 ロシア美女の水浴も、テントで火を囲む母とカイラートの語らいも、 覗き見するオルジャスの夢想さながらだ。 トマト採りより父と市場に行きたいオルジャスは、 父に教えて貰ったと自慢気に馬を乗りこなす。 彼は懸命に大人への背伸びしている。 母は村の女性から「疫病神」と罵られるが、 その理由は彼女が未…
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200w REVIEW '19 『プライベート・ウォー』

メリーはアドレナリン中毒だ。 スクープへの欲求はエスカレートし、 同時に周囲からの期待も高まる。 「君が信念を失ったら、僕らの希望は?」。 その恐怖の代償は、左眼の負傷と拭い去れぬPTSDだが、 マスコミは彼女のアイパッチでさえ英雄の象徴と祀り上げる。 「戦場は嫌い。でも自分の眼で見ずにはいられない」。 そこでは等しく死と…
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200w REVIEW '19 『ラフィキ:ふたりの夢』

「あんな風になりたくない」と母を嫌悪していたジキが “典型的なケニア女”に収まり、 他人の眼を気にしていたケナが「好き」に率直に行動する。 ケニアでは、たとえ優秀でも 女性の選ぶ将来は医師ではなく看護師だ。 しかし、ひとたび目覚めた者は逞しい。 集団リンチのような半殺しの目に遭ったケナの知性は、 それが正当な行為ではないと…
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200w REVIEW '19 『英雄は嘘がお好き』

「世間が人を作る。ここでは英雄ネヴィルだ」。 無一文の逃亡兵より、ブルゴーニュの田舎町で英雄として生きるほうが気安い。 「すぐ化けの皮が剥がれるわ」「同じ穴のムジナだ」。 ネヴィルに“嫉妬深い独り者”と揶揄されるエリザベットは 19世紀初頭を生きる自立した女性であり、 “英雄ネヴィル”の“作者”を自負しながら、 彼自身の“ホ…
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200w REVIEW '19 『T-34 レジェンド・オブ・ウォー 』

「面白い、お前と俺の一騎打ちだな」とほくそ笑むイェーガー大佐は、 ニコライに自分と同じ“匂い”を嗅ぎ取ったのだろう。 行動は大胆不敵、作戦は理知的なニコライは、 ネフェドボ村での初陣で敗れ、痛感する。 「もう部下を死なせるのは嫌だ」。 “死にたがり”とナチスに揶揄されたニコライが、 部下たちとT-34を磨き上げ、「白鳥の湖…
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200w REVIEW '19 『グレタ GRETA』

エリカはフランシスに冗談交じりで忠告する。 「マンハッタンの地下鉄でバッグを拾ったら、爆弾処理班に届けるのよ」。 そんな都会の流儀に染まらぬフランシスの“正義感”が、 文字通り時限爆弾を抱え込む。 ハンガリー語訛りのユペールのグレタ像が凄絶だ。 レストランの通り越しに立ち尽くし、 エリカを追い続ける執念たるや突拍子もなく、 …
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200w REVIEW '19 『ゴールデン・リバー』

炎に包まれた馬が闇を切り裂くように疾走する。 オーディアール流儀の西部劇は、 “黄金狂”たちの権謀術数を漆黒の闇で覆い隠す無法者の狂騒だ。 と同時に、「自由に生きているつもりが、 父への憎しみに縛られていた」“シスターズ”の関係性は オーディアールが熟知する、絶ち難い父と息子の相克であり、 「俺は家庭が怖い。あの血のせいで俺…
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200w REVIEW '19 『ワイン・コーリング』

「南仏のワインはタフすぎて多く飲めない」。 地質と気候によって、生まれるワインは毎年違う。 「1年に1度。人生でわずか40回のワイン醸造で、 20~25回は失敗、ほぼ成功は5~6回」。 そんな経験を重ねて、最良の決断を“体感”する。 自然農法のワイン作りは“国の認証が下りず”、 「3万本売って、最低賃金と同じ」程度の報酬だ。…
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200w REVIEW '19 『ジョージア、ワインが生まれたところ』

熟成し、発酵させる。 その自然の営みによって大地のエネルギーを育み、 その土地で摘み取られた葡萄の実は、 稀有なワインとなって住まう者たちに供せられる。 8千年前の遺構からクヴェヴリが出土される。 “ジョージアの魂”と絶賛されるイオセリアーニの『落葉』で描かれた、 ひとたびソ連によって画一化され、 大量生産を強いられた民族…
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200w REVIEW '19 『Girl/ガール』

「きみはもう女性だよ」。 そう医師に告げられても 常日頃、容姿端麗な娘たちに囲まれているララが、 性器をテーピングする自身を否定するのも無理はない。 「外見を気にしすぎないで」は慰めにすらならない。 「あなたは自分を追い詰めすぎよ」。 ララを国内有数のバレエ学校に通わせるため、 父は転職し、弟は転校した。 しかし、ララが…
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200w REVIEW '19 『ペトラは静かに対峙する』

「芸術は金になる」。 絶対的権力を奮う父性が一家を支配する。 「殺す度胸もないくせに」。 ジャウメは父に射竦められた息子が、銃を放てないと見抜く。 「お前の偽りの幸せを邪魔する好機を狙っていた」。 ゆえに、パウの逞しさを“日に日に好きになり”、まんまと足許を掬われる。 無慈悲の枷を解くのは、家族ではなく赤の他人だ。 男が牛…
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200w REVIEW '19 『エセルとアーネスト ふたりの物語』

「みんな私たちみたいに平和に暮らせばいいのよ」。 したり顔で呟くエセルに、懐疑的なアーネストが愉快だ。 「うちは労働者階級じゃないわ」が口癖のエセルは、 寝室の窓が広いからとカーテンに悩み、 レイモンドの巻き毛が切られては泣き伏せる。 悲観的な彼女の伴侶には、陽気で正直者のアーネストが適任だ。 ヴィクター・マクラグレンが憧れ…
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200w REVIEW '19 『COLD WAR あの歌、2つの心』

「私の生涯の女だ」。 ヴィクトルの惚れた弱みだ。 社会主義の閉塞感の中で、彼はズーラの独創的な奔放さに 自身の芸術家としての可能性を見たのだろう。 「愛があれば平気さ」。 理想を追う純情な男のロマンティシズムと したたかに運命を切り拓く女の逞しさが交錯してはすれ違う。 「私を連れ出して、永遠に」。 バトームーシュからノー…
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200w REVIEW '19 『私のちいさなお葬式』 Part.2

教え子だったワレーラから鯉を押し付けられたエレーナは、 元教師の“特権”を駆使してセルゲイに“死亡証明書”を取り付けさせ、 自身の葬儀の準備を着々と押し進める。 目的のためになりふり構わぬエレーナの独善は、 ロシア女性の逞しさそのものだ。 リューダ以外の村人に今なお一目置かれるエレーナの、 若かりし写真に美貌のよすがが漂う。…
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200w REVIEW '19 『トスカーナの幸せレシピ』

アスペルガー症候群の患者と相対するには、忍耐が肝要だ。 それなのにアンナは、「グイドにあなたの面倒を見て貰ったのかも」と アルトゥーロをからかう。 アルトゥーロは「全部過ぎたことさ」と明言するが、 怒りっぽさは相変わらずだ。 信頼すべき友人の“裏切り”が遠因とはいえ、チェルソは愛弟子に説く。 「助けはお前のためにならん」。 …
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200w REVIEW '19 『鉄道運転士の花束』 Part.2

「勇気を身に付けるよ。本物の運転士になる」。 しかし、シーマはイリヤの案じる通り、轢死の恐怖に身動きが取れなくなる。 しかしシーマには幼き頃、イリヤの運転する列車の前に 動じず立ちはだかった意志の強さがある。 イリヤとシーマの瞳は、本当の親子のように同じ澄み切った青だ。 今度はイリヤが自殺志願者の身代わりに、シーマのため線路に…
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200w REVIEW '19 『鉄道運転士の花束』

卒業式でイリヤに手を振るシーマは、 その生い立ちを思えば、感情表現は豊かで素直だ。 それはイリヤから親代わりの愛情を一身に受けて育った証なのに、 当のイリヤは「俺は愛とは無縁だ」とうそぶき、 シーマもイヤゴダも寄せ付けない。 鉄道運転士としての“殺人”に取り憑かれ、 手向けの花を自ら栽培する彼の脳裏に、 やはり轢死した最愛…
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200w REVIEW '19 『私のちいさなお葬式』

解凍された途端、バケツで跳ねる鯉は エレーナのこの世の“未練”だ。 彼女の脳裏に、若き恋を断念させて 都会で教育を受けさせたオレクへの逡巡が去来する。 幼い頃のオレクの写真には田舎暮らしの歓びがあふれている。 「ここにはアル中と老人しかいない」。 リューダの孫もバイクを走らせるだけの無職だ。 リューダに「何でも独りでやる女…
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200w REVIEW '19 『あなたの名前を呼べたなら』

「自分の生き方は自分で決める」。 メイド仕事の合間に、仕立て屋を手伝うことで 裁縫を学ぼうとするラトナに、 店主は「タダで習えると思うな」と世知辛い。 彼女には階級と性差の二重のハンデがある。 精神的に弱り切ったアシュヴィンの世話を焼くのがラトナだけとはいえ、 アメリカ育ちの彼は寛大だ。 「誰もが夢を叶える権利がある」。 …
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200w REVIEW '19 『第三夫人と髪飾り』

ソンに拒まれたトゥエットは父に罵られる。 「唯一の役目も果たせないとは」。 女性の価値は生殖能力だ。 初夜の印は高々と掲げられ、 メイの出産は“高価で売れる”牛のそれと等しく、 出産中の失神では鶏の首を切るように帝王切開される。 「あの子はまだ子供だ。野心なんてない」。 男児をもうけねば“夫人とは認められない”素封家で、 …
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200w REVIEW '19 『パリ、嘘つきな恋』

ジョスランに「自分自身で勝負しろよ」と指摘するマックスは、 「みんな嘘つきさ」と言い訳する彼に反撃する。 「お前は自分を愛せないだけ」。 嘘を重ねるにつれ、ジョスランはジュリーの実家への田舎道での車椅子との格闘といい、 その嘘で身動きが取れなくなり、 テニス選手にヴァイオリニストとフロランスの自由闊達と対照を往く。 「あなた…
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200w REVIEW '19 『真実』

「最近の映画には詩がない」。 それはファビエンヌに代弁させたドヌーヴの嘆きだろう。 役と俳優との皮膜を剥ぐ是枝式“即興演出”に 窮屈そうなビノシュとの不協和音は、 女優の本性に悪びれぬファビエンヌと、 母の“真実”に懐疑的なリュミエールとの関係性となって切り結ばれる。 母に「あの子は何でも一人でできるから」と評されたリュミエ…
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200w REVIEW '19 『さらば愛しきアウトロー』

銀行員は犯人の印象をこう証言する。 「笑ってたわ、幸せそうに」。 フォレストは強盗そのものを愉しみ、 強奪した金は二の次とばかりに、無造作に戸棚に投げ込む。 ジュエルの腕輪を“盗む”のもスリルゆえだ。 そんなフォレストにとってハントは「好敵手現る」で、 ダイナーのトイレであえて“自己紹介”する。 ハントの娘は言う。 「逮…
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200w REVIEW '19 『マルリナの明日』

野卑を露わにしたインドネシアの原風景が、 女性抑圧の過酷な現実を象徴する。 マルリナは冷静に鉈を振う。 彼女は暴力に晒されても、 こうして顔色を変えずやり過ごしてきたのだろう。 強盗団の首領の生首を携えての“自首”も、 彼女には日常の一端にすぎない。 マルリナは“復讐”したかった訳ではない、 ただ生き延びたかっただけだ。…
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