200w REVIEW '20 『お名前はアドルフ?』

「論争できればテーマは何だっていい。怒らせたいだけ」。 知能をひけらかす者は相手の商才が妬ましく、逆もまた然り。 「我が闘争」に触発されたトーマスの悪戯心から、 幼馴染みの夫婦に実弟、家族同然の従弟たちが露わにする憤懣や嘘の連鎖。 その子供じみた主導権争いに、 キャリアより夫の論文作成の“助手”を択り、家事に徹するエリザベトは…
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200w REVIEW '20 『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』 Part.2

「俳優は演じる役柄に似てくるのよ。いえ、役柄が似るのかしら?」。 ドヴィルの『今夜じゃなきゃダメ』へのアンナの出演をめぐって、 男児のように渋るゴダールの嫉妬は、 幼少期から彼女につきまとう“自立”の気概への怖れの表れだったのかもしれない。 芸名の名付け親がシャネルという事実も暗示的に、 悲劇に終わったプラハの春、対して祝祭さ…
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200w REVIEW '20 『アンナ・カリーナ 君はおぼえているかい』

女優に憧れる17歳の家出娘が サンジェルマン・デュプレでスカウトされ、 一躍スターにとは、出来すぎたシンデレラストーリーながら、 彼女がゴダールの“ピグマリオン”に飽き足らなかったのは、 自立心と好奇心ゆえだ。 「人生と映画が連動していた」。 彼女の強い意志は、『小さな兵隊』『修道女』と相次ぐ上映禁止処分を受け、 「黙った…
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200w REVIEW '20 『白い暴動』

差別は無知なる恐怖の成せる業だ。 70年代後半の英国、“Temporary Holding”は 生きづらさを体感する“市民”に、団結と闘争を“啓蒙”した。 人種を超えて英国全土から集結した若者たちの トラファルガー広場からヴィクトリアパークへのデモ行進は、 “カーニヴァル”に相応しい、その先に待つパンクの熱気の坩堝。 “反乱…
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200w REVIEW '20 『恐竜が教えてくれたこと』

ヒューホとテスの母が顔を見合わせ、一同唖然の沈黙を受け、 街を疾走するサムの痩身には少年の切実なリリシズムがみなぎる。 「独りでいる訓練をしなければ」。 末っ子のサムは、それまで漠然とした死の恐怖を、 干潟に足を取られたとき、リアルに実感する。「 僕が最初に死ぬなんて」。 その体験が、テスとヒューホのすれ違いに平静ではいられ…
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REVIEW 「第32回東京国際映画祭」アジアの未来 『50人の宣誓』

裁判所に向かう一族郎党50人を乗せたバスは、彼らの生命を司る運命共同体そのものだ。健常者のみならず中には障害を抱えた者も同乗し、ひとつのコミュニティの様相も孕み、その一方で妹を殺されたラズィエが扇動する、加害者の死刑に向けて“ひた走る”狂信者に導かれた原理主義の一行にも映る。とはいえ、一族の中に3年前に殺された犬の恨みに抱え続ける叔…
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REVIEW 「第32回東京国際映画祭」アジアの未来 『エウォル~風にのせて』

チェジュ島のカフェのオーナーはソウォルに言う。「欲張るな、食っていければいい」。競争社会に倦み病んだ都会人にとって、青く広い空と果てしなく続く海に囲まれた島の生活は、本来の自分自身を取り戻す癒しの空間となり、その実感は観る者の胸にもじわり沁み渡っていく。 ソウォルは彼女を訪ねてエウォルまでやって来たチョルを、「こんないい店が他…
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200w REVIEW '20 『ポルトガル、夏の終わり』

泣き腫らした眼で早朝のシントラを彷徨うジミーに、 「優しくなれ。きみが世界の中心じゃない」と忠告される フランソワーズの“終活”とはいえ、 他者の心までは操れない。 ゲイリーからの出演依頼に1年かかると聞き、 「本気じゃない人は、アイリーンは嫌いよ」と撥ね退けるのは、 ままならぬ自らの生命への苛立ちか。 フランソワーズは、…
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200w REVIEW '20 『グッド・ボーイズ』

「ドローンに触れるなよ」。 父にこう念押されるほど、触れたくなるのが少年の好奇心だ。 そしてそれが取り返しのつかない惨事を招くことは、 誰だって想像がつく。 「変人じゃなくて個性だ」。 人気者グループに憧憬の眼差しを注ぐマックスたちは、 “ビーンバッグ”の絆が永遠に続くと無邪気に信じている。 「人にはそれぞれの道がある」…
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REVIEW 『ある女優の不在』

「なぜ私を巻き込んだの?」。ベーナズは彼女に会えたと無邪気に歓ぶマルズィエを一喝する。ベーナズにとってそれは、身に覚えのない“貰い事故”のようなものだ。少女マルズィエは本当に首を吊ったのか。 それにしてもマルズィエは、これまで一面識もないベーナズに、大学に進学して、女優になる自分の夢を、家族に説得して貰えると、どうして確信して…
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200w REVIEW '20 『デッド・ドント・ダイ』

「まずい結末になりそうだ」。 ダイナーの惨死体を「ゾンビの仕業」と言いのけたロニーに、 その真意を「脚本に書かれていたから」と 手の内を明かさせるジャームッシュは返す刀で、 世捨て人ボブの視線から「ゾンビは物質主義の遺物」と一撃を見舞う。 「何ていかれた世の中だ」。 経済至上主義の世では、死体と雑魚寝するクリフも、祖母を懐か…
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200w REVIEW '20 『盗まれたカラヴァッジョ』

言葉にできない思いが銀幕にあふれる。 ラックはヴァレリアに漏らす。 「この仕事は感情を押し殺す必要がある。でも、きみといると無理だ」。 母娘の“ゴーストライター”も然り、 世紀の犯罪の「キリストの降誕」盗難も口外は許されず、 映画業界と犯罪組織の繋がりもタブーだ。 アンドーの主眼は事件そのものより、 縁薄い父娘の“共犯関係…
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200w REVIEW '20 『アンティークの祝祭』

「あなたたちの新しい人生が始まるわ」。 クレールにとって屋敷の至るところに飾られたアンティークは 彼女の人生で耐え抜いた痛みの代償だ。 夫との関係は破綻し、娘には愛情を注げず、 今は亡き息子が幻覚となって現れる。 審美眼に満ちた彼女が、教会の「睡蓮」の贋作に心癒される。 「今夜、私は死ぬの」。 記憶と意識が交錯する彼女はも…
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200w REVIEW '20 『私の知らないわたしの素顔』

クララがアレックスの“その後”を創作するように、 すべては悲劇のヒロイン気取りの彼女の妄想かもしれない。 至近距離で顔を合わせても、そうと知らない相手は視線を逸らす。 SNSの得体の知れなさだ。 「SNSが嵐の中の救命ボート」。 クララは離婚の痛手よりも老いに脅え、若さに執着する。 「怖いのは死じゃない、見捨てられること」。…
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200w REVIEW '20 『最高の花婿 アンコール』

本音が透けた毒舌を振りまくことで、 クロードは現実に折りあいをつけている。 孫の存在が、彼の差別や偏見の理由を曖昧にするからだ。 問題は、婿たちだ。 ユダヤ系は信頼に値せず、イスラム系は戒律に縛られ、 中華系は暴漢に脅え、黒人の成功は一握り。 マリーは言う。「隣の芝生が美しいだけ」。 そんな彼らの“逆差別”ゆえに見えなくな…
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REVIEW 『ラスト・ディール 美術商と名前を失くした肖像』

オラヴィは目利きの美術商だが、私生活に関しては順風満帆とは程遠い。ただ一人その舵取りの役目を担っていたであろう妻も今は亡く、肝心の稼業においても、絵画の価値さえ判断できないエージェントが牛耳る業界において、今やオラヴィは時代遅れの“生きる化石”だ。しかし、一流の目利きのプライドがオラヴィにはまだある。その日もタウベの絵を知らぬエージ…
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200w REVIEW '20 『フェアウェル』

「悲しい話は後回しに」。 余命を告げないのは、東洋の伝統的な死生観だ。 相手が親なら、なおさらだ。 「ガンではなく恐怖に殺される」と嘆く父に、ビリーの胸中に“なぜ”が渦巻く。 「私が混乱したのは何も知らされなかったから」。 祖父の死の記憶に苛まれる彼女にも、 ベッドで肩をすぼめる父の背中にあふれる哀しみは共感できる。 叔父…
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200w REVIEW '20 『レ・ミゼラブル』

イッサは問答無用で彼の頭を叩く父の前で 縮こまった身体をいかに伸ばすか、 その手立てを知らない単なるお調子者だ。 赤ん坊のライオンを盗むことが どのような事態を招くのか想像できないのは、 彼が未熟なだけではない、 ロールモデルとなる大人がいないからだ。 サッカーW杯優勝のフランスチーム同様、 エッフェル塔へと歓喜の行進を…
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200w REVIEW '20 『グッドライアー 偽りのゲーム』

パソコンのモニター越しに、 ゲーム感覚で偽りのプロフィールを綴る初老の二人。 「私は不誠実なことが何より嫌いだ」と断言する 人間ほど油断ならないのが定番なら、 祖母の“老いらくの恋”にブレーキを掛ける孫もセオリーだ。 そんな彼らの“二面性”を強調するコンドンが、 やがて露わにするのはベティの“初恋”の悲劇だ。 ナチスの独裁…
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200w REVIEW '20 『シェイクスピアの庭』

ハムネットの死に続き、グローブ座を燃上させた失意のウィルが、 愛息ならぬ自らを葬る場所をストラットフォードとするなら、 妻と娘との和解が先決だ。 幼きハムネットは彼に語り掛ける。「物語を終わらせなきゃ」。 “不世出の劇作家”は家庭では全くの役立たずだ。 娘婿はすでに彼の遺産を当てにしている。 「娘を中傷から守りたい。それが真…
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