REVIEW 「Passion 愛の旅」 Part.2

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第10場「Passion 燃えるリズム」は、布を翻して風が通り過ぎるや、
大和悠河が緑を基調にした派手な衣裳で登場。
蘭寿とむと北翔海莉とともに「マンボ・ナンバー5」に乗って
恋人を探すユーモラスな中詰は、熱っぽいラテンの世界だ。
大和と蘭寿、北翔は銀橋から客席降りするものの、
客席前方に留まり、勿体ぶらずに(?)、
もう少し通路奥までラテンの世界に導いてくれれば、
場内はもっと盛りあがったかもしれない。
パーカッションが鳴り響き、サンバホイッスルが場内を圧し、
大和が「ブラジル」を熱唱、カリオカたちを従えて踊り、
ペアを組んだ美羽あさひが唄い継ぐ。
中詰のクライマックスで「ブラジル」のメロディが瞬時にして
主題歌「パッション」に転換する竹内一宏のアレンジが
ドラマティックで、心を鷲掴みにされた。
ここでは、カリオカの女の音乃いづみの
個性的なヘアスタイルが目立った。
芝居では歌手役に甘んじた音乃は本作で卒業、
目いっぱいショウを愉しんでいる様子が観る者にも伝わってきて、満面の笑顔が晴れやかだった。
カルナヴァルの余韻に浸るかのような大和の銀橋のソロは、南国的なボサノヴァ風メロディ。
もう少し肩の力を抜いて、さらりと歌ってみてはとも思うが、
投げキスを決め、気障に場を締めくくるのは、さすがに大和の独壇場。ここでは娘役の影ソロが美しかった。

第12場「ファンタジー」は暗闇の沈黙の世界から始まる。
盆の回転とともに、轟悠がうずくまるような姿勢を留めたカルナバル・シャドーの男たちを引き連れて登場。
メロディの高まりとともに、ゆっくり回転する盆の中央からは奈落からカルナバル・シャドーの女がせり上がる。
舞台効果を活かした演劇的な臨場感抜群の演出だ。
「黒いオルフェ」を唄う轟を中心に、珠洲春希、早霧せいな、春風弥里ら男役が踊る。
若央りさの振付は、大人っぽい抑制された動きの中で、白の衣裳の轟のシックさを強調するかのようだ。

フィナーレは、まず北翔が銀橋で「パッション」のムーディなアレンジのソロを
伸びやかな歌声で朗らかに聴かせ、下手から和音美桜、上手から花影アリスが加わる。
スキャットも小気味良い北翔が、ダイナミックで溌溂としたダンスでロケットボーイの役割を果たし終えると、
赤い羽根飾りが腰から広がり、赤い長手袋のロケットガールが舞台上に並ぶ。
フラミンゴを思わせるあでやかな雰囲気を醸し出し、
2列のロケットがやがて1列に広がるオーソドックスな振付は羽山紀代美。

そして大階段では、濃紺の変わり燕尾のようなユニークな衣裳の蘭寿を中心にした、
紫の衣裳の男役による総踊り。シャンソンの「そして今は」を鞍富真一がボレロ風にアレンジ、
悠未ひろと十輝いりすが、七帆ひかると早霧せいなが対を成し、炙り出すような“熱い”男役の色気を発散させる。
クライマックスでは男役が銀橋に居並び、蘭寿の勇壮な歌唱で締めくくる。
初日はここで客席から「よッ!」と掛け声が掛かるように、蘭寿の熱演が目一杯活かされた、
見応えある名場面のひとつになった。この場も振付は羽山で、
オーソドックスでどことなく懐かしさが感じさせる。男役群舞の王道というべきか。

続いて、アズナブールの「帰り来ぬ青春」の壮大なアレンジとともにセリ上がる
轟とシャルマンに扮した大和のデュエット。
羽山の振付は、ポジションが相前後する密着度の強い濃厚なもので、
宝塚ならではの倒錯的な官能美を生んだ。この場のトランペットは、相変わらず安定感がないが、
初日に比べて千秋楽近くには、若干、劇的なアレンジが加えられていたのは嬉しかった。
大和が名残を惜しむ轟を押しとどめるように、上手袖に消えるや、曲調はラテンのアレンジに転じ、
美羽、大海亜呼ら大階段から降りてきた娘役が踊り、哀愁たっぷりの轟の「帰り来ぬ青春」のソロを彩る。
早代わりで男役に戻った大和が、轟とアイコンタクトでお互いを確かめあい、今度は轟が下手袖に消える。
さらに、大和の銀橋のソロで轟と再会するというように
轟と大和との関係性に不可思議なストーリーを感じさせるフィナーレだ。
さらに大階段から蘭寿と北翔が合流し、轟が大和、蘭寿と北翔を従えて、
銀橋で男役スター4人のそろい踏みで、およそ7分にわたる長丁場を豪華に締めくくった。

エトワールは音乃。伸びやかな歌声で、歌詞をひとつひとつ慈しむように丁寧に歌いあげる。
階段上の音乃は終始、微笑みを絶やさず、
穏やかに客席を見渡す眼差しが、卒業の万感を観る者に惜しみなく伝えるかのようだ。
続いて、早霧、和音、花影。悠未、十輝、七帆のトリオ。
そして、ソロの北翔と蘭寿は肩にショールを掛けたシックな衣裳。娘役トップの羽を背負った美羽。
大和に続いて、轟が主題歌「Passion 愛の旅」を唄い継ぎ、パレード。
深紅の照明が舞台上を染め上げる、まさに“パッション”の世界。

たとえば、第6場「砂漠の薔薇」でストレンジャーが辿り着くハーレムの別世界であり、
あるいは第17場「フィナーレ」でのシャルマンから紳士への生まれ変わりのような早変わりのように、
酒井澄夫が見つめる“愛の旅”とは、旅人が束の間の歓喜に溺れる夢幻の無常観であり、
何ものも抗うことのできない運命の不思議な悪戯なのかもしれない。
そんな儚い人生の不条理が、「Passion 愛の旅」というショウを、
いつになくシックな大人の感受性あふれるものにしているのだろう。
リアリズムの芝居に幻想的なショウの2本立てのバランスも、いつになく絶妙で、
そんな宝塚歌劇の新生面に果敢に挑んだ宙組生の心意気や良し、だ。

なお、初日の舞台挨拶は、組長の美郷真也が、
「さらにパワーアップして東京にやってまいりました」と口火を切り、
特別出演の専科の轟悠、汝鳥伶を紹介した後、陽月華の休演に言及し、
「彼女の思いも胸に、出演者一同、よりいっそう集結して公演を務めてまいります」とあらためて決意表明した。
大和悠河は、「桜の国日本。心弾む春を告げる桜。桜の名所、宝塚の花のみちの桜を存分に満喫し、
そして心新たに今日、東京宝塚劇場の幕を開けました」と挨拶。
そして大和も陽月の休演に触れ、「このメンバーで一公演一公演、大切に演じてまいりたい思います」。
汝鳥、轟への感謝の言葉を述べた後、
「さらにパワーアップした宙組を、どうぞ千秋楽までよろしくお願いいたします」と結んだ。
轟は、満開の桜に囲まれた富士山の美しさをおもむろに語った後、
「宝塚一の美しさを競いあう宙組も、この東京宝塚劇場でますます磨きをかけ、
皆さまを魅了することでしょう」とシンプルにまとめた。
場内拍手鳴り止まぬアンコールでは、まず大和が「何度でもぜひ観にいらしてください」。
続いて轟が「皆さまと、明日もお目にかかれることを心から愉しみにしております」と場内を笑わせた。
1階前方席では総立ちの歓声の中、2度目のアンコールではお約束ともいえる、
大和「お足許にお気をつけて」、轟「お忘れ物なきよう」、二人合わせて「ありがとうございました」で幕となった。

それにしても、宙組公演といえども、開幕、終幕いずれのアナウンスも、すべて専科の轟が務めるという、
考えようによっては大胆な公演だったなと、今更ながら思い返したのだった。

●DATA
作&演出=酒井澄夫
2008年4月4日~5月18日、東京宝塚劇場

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