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200w REVIEW '17 「チェコ映画の全貌」 『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』

モーツアルトの子守歌を追い払うかのように スラプスティックな劇伴が主旋律を乗っ取り、 ホームズやエジソンとも“親友”という私立探偵の 敏腕ならぬ放埓な混沌の原因は、 泥まみれ、汗まみれになっても二枚目に徹する人を喰った彼のドジだ。 ピルスナーに目がない大喰い警部が カーターと失態の数々を受け流しながら名相棒となり、 二人の…
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200w REVIEW '17 『ダークタワー』

憎悪の言葉だけで人間を敵対させる程の能力を持つ ウォルターのダークタワーへの執着も、 それを壊滅できるのは子供の心のみという暗喩も、 私には今ひとつ掴めなかった。 嫉妬ゆえに愛を滅ぼすわけでもなく、 そもそも世の中が廃墟と化して死の存在意義は何か。 思わせぶりに対立軸を煽るわりに、 魔物たちは肝心なところであっさりジェイク…
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200w REVIEW '17 『巫女っちゃけん。』

「起きたことを受け止めて生きる」。 そんな父の”教訓”に従えるほど、しわすは大人ではない。 がさつで礼儀知らずで、背筋は伸びず、神を敬わない。 考えるより先に行動に走る。 健太はそんなしわすの合わせ鏡だ。 裏切られ、傷つけられても、しわすが健太を見棄てられないのは、 奥底に眠る“母に捨てられた”痛みが揺さぶられるからだ。 …
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200w REVIEW '17 『セザンヌと過ごした時間』

「俺が小説を、お前が挿絵を」。 嫉妬や誤解とは無縁だったセザンヌとゾラの無邪気な友情も 年齢を重ね、俗世にまみれ、色褪せうつろう。 「お前も大人なら子供の夢を裏切れ」。 素封家に育ち、パリで贅沢三昧のセザンヌは、 ゾラを「人生を倹約して生きてきたから心は空虚」と評するが、 移民の子で “食べるために書いた”ゾラが 南仏に焦…
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200w REVIEW '17 『花咲くころ』

街は一瞬即発の空気で覆われ、 パンを買うにも押しあいへしあいの喧嘩腰なら、 失業中の男たちは酒に溺れては、 旧体制を懐かしむ声が上がっても不思議はない。 若者の本音は、流行歌が「人生は束の間だ」と唄う 時代の閉塞感に締め出される。 崩壊寸前の家庭で感情を押し殺すナティアは、 ラドに手渡された拳銃を「格好いい」と憧れつつ、 …
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200w REVIEW '17 『馬を放つ』

色褪せた映画ポスターを部屋に飾ったままのケンタウロスが 映写技師の仕事を失したのは時流に乗り遅れただけではない、 村を牛耳るイスラム原理主義者の思想弾圧の影響だ。 そんな余所者の不寛容が、 「かつては分かちあい、固い絆で結ばれていた」キルギスの遊牧民の魂を穢し、 “優しい瞳”のままでは世を生きづらくさせる。 結婚しても彼の心…
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200w REVIEW '17 『ロダン カミーユと永遠のアトリエ』

「肉体は永遠だ」。 ロダンは彫刻家としては大器晩成の天才肌だが、 一男性としては最低だ。 彼は息子の認知を願う内縁の妻ローズを、 「出来の悪い作品だ」と突き放し、 「私ほど才能のある弟子はいない」と誇るカミーユの 「あなたは上昇気運、私は下降線」との嘆きに同情しない。 彼自身、酷評に耐えつつ、「美は作業に宿る」と制作を続け…
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200w REVIEW '17 『アランフェスの麗しき日々』

作家の“妄想”とはいえ、 いきなり女性に「男との初夜は?」とは不躾だ。 「女は男の弱さを愛するの」。 物語は妄想の産物であり、 女は男の帝国の女王だと持ちあげても、 それはタイプライターとジュークボックスが 流行の先端だった時代の男のエゴイズムだ。 夏のテラス、吹き抜ける風が一組の男女を包み込み、 テーブルの下には愛犬。…
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200w REVIEW '17 『バリー・シール/アメリカをはめた男』

TWAのパイロット時代から 悪戯心で自動操縦をオフにするバリーにとって、 ICAならぬ CIAの秘密任務はちょっとした冒険と大差なく、 その無邪気さゆえにコロンビアの麻薬密輸にも 罪悪感なく手を染める。毒を喰らわば皿まで。 「アメリカは最高だ」。 しかし彼は、国家戦略のためなら、 人一人の生命など駒にすぎないと自覚していな…
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200w REVIEW '17 『オレの獲物はビンラディン』

“神の啓示”を聞いた愛国者ほど 始末に負えない人間はない。 毎朝、電話の着信音や礼拝の祈りに 衝き動かされるように起床するゲイリーは、 風船を割られた“神の剣”を手にして以来、 大麻の幻覚症状もあり、 いかなる場所でも“一つ眼”に監視され、 瞼に映る神の現身に畏怖する。 「謝るより許しを乞うほうがいい」。 愛より使命の…
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200w REVIEW '17 『ホリデイ・イン』

1946年を時代背景に『スイング・ホテル』を舞台化とは、 ブロードウェイも回顧志向か。 とはいえ、ふんだんなI. バーリンの名曲と ダンスシーンは単純に楽しい。 ジムの“Be Careful, It's My Heart”は ライラに“裏切られた”リンダへの哀感のこもったラヴソングとなり、 ダンサーとしてのC. ブルーの多彩…
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200w REVIEW '17 『謎の天才画家 ヒエロニムス・ボス』

聖母マリア兄弟会に属し、 「宗教に関しては保守的」だったボスの「快楽の園」には 「宗教的な罪がすべて描かれている」。 美術史家のみならず歴史家、哲学者、作家、音楽家らの 独創的な“妄想”さながらの議論百出が、この絵の懐深さだ。 観衆の喧々諤々こそが宗教画の本来の目的だからだ。 絵の中の楽譜は“禁断の音色”を奏で、 その物語…
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200w REVIEW '17 『ポルト』

男は夢見がちで、女は現実的という常套句が、 思わず脳裏を過る。 採掘場での“一目惚れ”から 「言葉にしなくても互いの気持ちが判る」関係は運命としても、 定職に就かないことを開き直るジェイクは 「仕事もしないで年上の女を口説いているだけ」と 軽んじられても自業自得だ。 マティのアパート前に居座り、 愛を口実に暴力を振るって…
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200w REVIEW '17 『プラネタリウム』

「僕は正義を信じている」。 そうローラに断言したコルベンが “中傷”を越えた“憎悪”に呑み込まれる。 「どうして昼に星は見えないの?」とケイトに尋ねられ、 ローラは応える。 「暗闇じゃないと見えないものもあるの」。 それは彼女たちの降霊術も同じだが、 コルベンはそれを映像に収めようと躍起になるあまり、 “夢の女”ともて…
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200w REVIEW '17 『僕のワンダフル・ライフ』

犬の輪廻転生という東洋的な死生観に頬が緩む。 「お前は頑固だな」。 イーサンはバディに呟くが、 イーサンもまた生来の頑固さゆえにかけがえのない愛を見失った。 彼らは“似たもの”同士だ。 「犬は人間の最良の友」。 飼い主の幸福を望み、落ち込んだときは懸命に励ます。 それを犬の擬人化と切り捨てられない共感を刺激するのは、 犬…
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200w REVIEW '17 『ソニータ』 Part.2

ソニータのMVが米国の大学に認められるには、 多くの支援者の尽力があってこそだろう。 アフガニスタンでのヴィザの取得は綱渡り的で、 テヘランに戻れない危険とも背中合わせだ。 ソニータとの別れを涙で惜しむ姪や家族への未練は断ち難いが、 母を“騙して”まで彼女が自分の人生を掴んだことは、奇跡だ。 同級生たちの多くはいまだ大金と引…
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200w REVIEW '17 『ソニータ』

ソニータの母もかつて年上の夫に“買われた”にも関わらず、 それを「伝統だから」と娘に強要する。 スクラップブックに貼り付けたセレブの写真に自分の顔写真を重ね、 ラップスターを夢想するソニータは、 “女が歌うのは嗜みがない”イスラム社会で、 男尊女卑のラップを歌いながら、 キャメラの前でベールを脱ぐことは「家族が大騒ぎをする」…
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200w REVIEW '17 『ゴッホ~最期の手紙~』

配達されなかった一通の手紙が、 自殺の謎さえ秘めたゴッホの最期の日々を紐解く。 アルマンに問わず語りする人々の証言は、 彼の死の責任を回避するかのように矛盾を孕む。 物静かで、偏執的で、几帳面。 そんなフィンセントとテオの唯一無二の兄弟の絆は、 芸術面でゴッホから“新たな兄”と敬愛を寄せられた ガシェ医師でさえ超えてはなら…
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200w REVIEW '17 『ナインイレヴン 運命を分けた日』

危機に直面して、その人の人間性が露わになる。 「もう孤独は嫌」。 その朝の離婚協議で「家族のために働いてきた」と訴えるジェフリーに、 「もう家族はいない」と聞く耳持たなかったイヴが、 マイケルに彼の“成功”を揶揄されるや、 労働者家庭に生まれ育った夫の苦労を説く。 誰にも後悔はある。 ギャンブル狂のエディは金欠で結婚10周…
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200w REVIEW '17 『静かなふたり』

古書を箱に詰め込んだまま、 客が来なくても構わないとうそぶくジョルジュに、 マヴィを「緑の麦畑」に住み込みで雇う理由などない。 神出鬼没なジョルジュの掴みどころのなさに マヴィの孤独が疼いたにせよ、 年齢差を気にする不器用な彼らのプラトニックな恋の急接近に、 私は唖然と取り残される。 謎の訪問客の昏倒以来、 時を忘れたよ…
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200w REVIEW '17 『ル・コルビュジエとアイリーン 追憶のヴィラ』

男たちからも人生からも毅然と立ち去った印象の アイリーン・グレイの妥協を許さない“美学”が、 互いに敬意を寄せながらル・コルビュジェとの関係に一線を画した。 才能では敵わないル・コルビュジエに アイリーンを通して優位性を誇示したバドヴィッチに 散々、名声を利用され、浮気されても戦後、再会の歓びで抱擁するのは、 20世紀初頭ら…
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200w REVIEW '17 『ジュリーと恋と靴工場』

ジョギングランナーが自転車を漕ぐジュリーの脇を、 彼女が落ち込んでいるときは追い抜き、 有頂天なときは追い抜き返される。 人生に浮沈は付きものだ。 靴職人は手作りの靴に誇りを持っているが、 正社員でもないジュリーが履けるのは、 高価な“ジャック・クチュール”ではなく “シューズパラダイス”の特売品だ。 「私はただ働きたい…
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200w REVIEW '17 『スイス・アーミー・マン』

マニーが“息を吹き返した”のは、 彼の口許に溜まった洞窟からの水滴の影響だけではない。 「孤独のまま死にたくない」。 切実なハンクの“相棒”の希求ゆえだ。 スマートフォンに収められたサラの面影がふたりを一心同体にし、 絶望だけの野生の森が彼らの工夫を凝らした楽園となる。 硬直したマニーの無表情が解れ、 ハンクは見過ごしてい…
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200w REVIEW '17 『笑う故郷』 Part.2

「苦しみからしか名作は生まれない」。 普遍的な社会の暗部に言及するのがダニエルの作家性であり、 舞台は故郷の町でも登場人物は架空の存在と彼が主張したところで、 読者がそれを同一視するのは止められない。 「どうして美しい小説を書かないの?」。 聴衆から問われ、ダニエルは言葉に窮する。 「作家生命の問題だ」。 しかし、彼らにと…
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200w REVIEW '17 『笑う故郷』

40年前に“逃げ出し”、 両親の葬儀にも参列しなかった故郷を“見下した”小説で、 ノーベル賞を受賞した彼の“名誉町民”を 誰もが手放しで歓迎しているはずもない。 幼馴染みのアントニオは開口一番、 「お前の昔の恋人と結婚した」と威張る。 ダニエルに敵愾心を露わにする“町の芸術家”ロメロを牽制する そのアントニオの言外にも、ダ…
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200w REVIEW '17 『AMY SAID エイミー・セッド』

「誰が見る?俺が見たいんだ」。 “映研”の8人はエミの自殺を20年間、引きずっている。 その理由に思い当たる節はあっても、 真実は永遠の闇だ。自死は罪だ。 直子の「私たちは何でも話してきたじゃない」は嘘だ。 “ファムファタル”なヒロインをめぐる、 思春期の思慕と嫉妬を隠し持っても当然だ。 「人生のピークって誰にでもある」。…
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200w REVIEW '17 『ポンチョに夜明けの風はらませて』

「勇気を失くすことはすべてを失くすことだ」。 八兵衛の”迷言”を掲げる3人の高校生の 予定調和とは無縁の取り止めのない旅が、 卒業式までの無為な猶予期間に風穴を開け、 映画もあえて物語の無軌道を修正しない。 彼らの旅を翻弄した女たちは、 又八の根拠のない父親捜しの旅にあっさり見切りをつけ、現実に戻る。 初運転の車があちらこ…
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200w REVIEW '17 『追想』 Part.2

庭に投げ出された無惨な焼死体に、 ジュリアンはクララと愛娘フロランスの非情な最期のすべてを察する。 アンリコは穏やかに築きあげてきた幸福が、 瞬時にして掌から零れ落ちたと察するジュリアンの絶望を、 “抵抗”のモチベーションに見据える。 この田舎の古城は、皮肉にも勝手知ったる我が家だ。 井戸が口を開く地下道を疾走し、 マジッ…
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200w REVIEW '17 『追想』

虚しい闘いだ。 たとえ復讐を果たしても、ジュリアンに“勝利”はない。 「早く子供を作りましょう」。 クララの囁きが彼の脳裏に、 果たされなかった約束への後悔とともに甦る。 敗色濃厚に追い詰められたナチスの暴挙に、 「不安になった。何されるか判らん」とのジュリアンの深慮遠謀は、 しかし裏目に出てしまった。 「急に悲しくなっ…
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200w REVIEW '17 『ダンケルク』

容赦ない空爆を前に、兵士の生命は脆く儚い。 劣勢の戦局に、「故郷へ」と切望する彼らの執念を ノーランは重低音の効果音を響かせつつ、 輸送船の出航と 負傷兵を担架で運ぶトミーとギブソンの疾走や、 海に不時着した戦闘機に身動きできないコリンズと 水中で爆撃から身を守るトミーを重ね、 観る者にその極限を体感させる。 祖国の地を…
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