テーマ:REVIEW~映画 '14

REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『ザ・レッスン/授業の代償』

ナデジガに財布を取ったと疑われた生徒たちの彼女に対する眼差しは、 敵対的と言っていい程、醒めきっている。 そこに恩師への敬愛や信頼関係を感じ取ることはできない。 彼女はこれまでも生徒たちの心を踏みにじるかのごとく、 こうして彼らを一刀両断してきたのだろう。 彼女の容赦ない追及の刃は、 当事者である被害者の女生徒さえも気遅…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『ナバット』

老女は、ひたすら歩き続ける。 先行きの見えない未来を、それでも前を向いて。 牛乳瓶を両手で抱えて谷を越えるオープニングシーンから、 ナバットはまるで苦行に耐えるかのように歩き続ける。 その頑なさは、彼女の抵抗だ。 豪雨の日も、彼女は牛をひいて、ひたすら前進を続ける。 部屋には夫と彼女の写真の間に ゲバラのポートレイ…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」ワールド・フォーカス 『リアリティ』

あの青いビデオテープに何が映っているのか。 少女リアリティのみならず、観客の好奇心もこの1点をめぐって、 映画の世界観に引きずられてゆく。 しかし、カンタン・デュピュー監督はどこまでもその真相をはぐらかし、 大いなる逸脱に戯れ、 ジャゾンと映画プロデューサーとの禅問答のようなやり取りで、 観る者をのらりくらりと煙に巻く。…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」アジアの未来 『ノヴァ~UFOを探して~』

この世で“自分らしく生きる”ことは、どれほどの至難の技だろう。 バークが追う“UFO”とは、彼が“自分らしく生きる”志を象徴する。 監督のニック・アミール・ムスタファは、 バークが監督する自主映画のバカ騒ぎに満ちた珍道中に、 そんな易々とは許されない自由奔放さを、 少年さながらの茶目っ気あふれる笑いで包み込むと同時に、 …
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『ロス・ホンゴス』

監督のオスカル・ルイス・ナビアは、 肌の色も生活環境も対照的なRASとカルビンを通して、 スケートボードやパンクロック、グラフィックアートといった コロンビアのポップカルチャーの現在を俯瞰して見せる。 日常生活をドキュメンタリーのように映し出すことで、 その中から彼らの青春劇を抽出しているようだ。 自転車で街を疾走す…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」ワールド・フォーカス 『ハングリー・ハーツ』

結婚披露パーティの夜、 ニューヨークの路上で馬を射殺するカウボーイの悪夢を見たミナの、 それはやがて狂気に満ちた正夢となる。 中華料理店のトイレに閉じ込められて、 ミナはジュードの放つ“悪臭”に顔をしかめる、 そんな苦笑い交じりの最悪の出逢いで、 初対面にして恥部を曝け出した彼らは、 その後、何の隠し立てもなく、 …
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」CROSSCUT ASIA #01 『コンクリートの雲』

アジア通貨危機に見舞われた後のバンコクの繁華街には、 建設途中のまま放置された高層ビルが 至るところに乱立していた。 激しいスコールが降り注いだ後、濁った雨水が溜まり、 それが廃墟さながらのわびしさを強調していた光景は 今も私の記憶に生々しく刻み込まれているが、 兄弟の暮らす団地の屋上に据え置かれた 貯水タンクから漏れ…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『メルボルン』

赤ん坊は未来を担う存在だ。 ならば、その死は将来の希望を失うことを意味しないだろうか。 「どうしてこうなった」。アミルは嘆く。 息もしない赤ん坊を前に、渡豪直前の浮わついた彼の昂揚感は、 たちまち萎える。 「お前が引き受けたのが悪い」「なぜ嘘をついたの?」 。 気が動転するあまりなのか、若夫婦はその罪をなすりつけあうが、…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『マルセイユ・コネクション』

ピエールが私生活を投げうってまで職務に忠実だったのは、 子供たちの未来の社会のためだ。 異動前、児童担当だった彼には、 麻薬から足を洗うことができずに、 絶命した多くの子供たちがいた。 短い生涯を麻薬コネクションに絡め取られた、 そんな彼らの死と親の嘆きに報いるためには、 その供給源を断つことが最重要だと。 しか…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『遥かなる家』 Part.2

(つづき) いくら旅を続けども、 兄弟の眼前には どこまでも砂の海となった大地が広がる。 かつて町の記憶を留めた回廊は 今やもぬけの殻となり、 かろうじて生活の実態を留めた そこかしこに砂は容赦なく浸食している。 アディカーは驚く。 「1年前に通ったときには、人が住んでいたのに」。 草原の砂漠化は、 私たちの想…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『遥かなる家』

内モンゴルの乾いた大地に、 少年たちの凛とした気概が晴れやかに映える。 対照的な今を生きる幼き兄弟は、 放牧民のルーツと近代化の波に板挟みになった “ユグル族”の現在そのものだ。 草原は砂漠化の一途を辿り、 草原を探して放牧する彼らの暮らしも先細りで、 そこに希望を見い出すのは困難だ。 それでも彼らは、ここで生き抜く…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」ワールド・フォーカス 『アトリエの春』

ヴェトナム戦争直後の60年代末は、 韓国社会でも女性が独りで生きるには困難な時代だったのだろう。 食事の配給には2度並んでシラを切る 母のふてぶてしさを隠そうともしないミンギョンも、 家に帰れば、博打とギャンブルに明け暮れる 夫からの暴力にひたすら耐える日々だ。 そんな母の惨状を、 涙を堪えて目を逸らすことしかできない…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」アジアの未来 『マンガ肉と僕』

ワタベは3人の女たちと深く関わりあい、 やがて“男らしく”変貌する。 しかし、その“男らしさ”は あくまでも男社会での価値観だ。 大学に入学したばかりのワタベは、 ノートを貸してくれ、代返をしてくれと、 いいようにクラスメイトに利用される。 「そういう人の顔が一目で判るようになってきた」。 ワタベは自嘲するが、 …
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『来るべき日々』

「キャメラは厄災を引き起こす」。 まるでメキシコ時代のブニュエル作品さながらのシュールな台詞だが、 いにしえの懐かしさの残るパリの路地裏で、 ロマンの歩いたすく直後にピアノが落下するのを、 彼はキートンさながらの無表情でやり過ごす。 そんなドタバタ喜劇にノンシャランと潜り込む無頓着な軽やかさは、 むしろタチ的と言うべきか…
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REVIEW 『ジミー、野を駆ける伝説』

ケン・ローチの主人公たちは、誰もが不器用なまでに純朴だが、 その裡に自分の信念を貫く意志の強靭さを秘めている。 彼らの胸中に潜む優しさや愛情は、 時にやむにやまれぬ大義や義憤のために退けられ、 容赦ない理不尽との闘いの渦中に、あえて我が身を投げ入れる。 ジミーもまたそんなローチ映画の系譜に連なる 名もなき小さな抵抗…
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REVIEW 「ポーランド映画祭2014」 『真夜中のふたり』

「こんな出逢い、諦めていた」。 クバはミハウの耳にこう囁き、貪るように彼の身体を求める。 対するミハウも、友人に「理想の男と出逢った」と告白していた。 それまで抑制していた欲望を一気に吐き出すかのような、 そんなふたりの男たちの裏町での肉体のぶつかり合いは荒々しく、 それゆえに男たちの激しい性の衝動が生々しく露わになる。 …
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REVIEW 『おみおくりの作法』

人の死に尊厳が認められるのなら、 死後であってもそれは守られるべきだ。 ロンドンの民生係、ジョンの職務は、 身寄りもなく、引き取り手もいない死者のために、 彼らの“遺品”を私立探偵のように細やかに調査して、 何らかの係累を探し出すことだ。 ジョンは、“孤独死”という不名誉を負って旅立つ故人に、 せめてもの尊厳を添えよう…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」コンペティション 『紙の月』

ガラス窓ひとつ隔てた向こう側は、未知なる別世界だ。 梨花はその窓を破り越えた。 常識人の隅には、たとえ強く誘われようとも 決して踏み越えることのできない、それは無謀な冒険だ。 たしかに、梨花の横領は疑いようのない犯罪だが、 息がつけない閉塞感に包まれた現実に風穴を開けるのは、 そんな後先を考えない衝動であり、 それは隅…
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REVIEW 『サンバ』

狂騒の結婚披露宴を映し出したキャメラは、 やがて厨房へ移り、そこからさらに奥へ進み入って、 皿洗いする下働きの男たちをとらえる。 エリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュの監督コンビは、 このオープニングシーンで、 贅を極めた乱痴気騒ぎに興じる富める人々と、 その宴の“残飯”を持ち帰る貧しい人々という 対照的な世界を端…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」アジアの未来 『北北東』

冴え冴えとした晩秋の深夜の森での一大捜査線の最中、 綿帽子のような風花が幻想的に降り注ぐ映像美に目を見張らされる。 そのミステリアスな非現実感は、 この事件の迷宮入りを詩的に暗示するかのようだ。 文革直後の中国東北部の牧歌的な風景にのどかな風がそよぐが、 この物語自体もいささかのんびりしすぎていないか。 我が子誕生を…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」アジアの未来 『メイド・イン・チャイナ』

居酒屋で女店員に絡む酔客を「腐ってる」と押し留めた検察官は、 友人のはずの彼に殴られ、こう罵倒される。 「韓国はどこも腐ってる」。 それはチャン室長も同じことだ。 廃棄品のはずの汚染されたウナギを密売する男たちが、 中国人のチャンを蔑む態度に耐えかねて、 「資本主義の奴隷、金の亡者」と罵詈雑言を投げかけても、 彼女自身…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」ワールド・フォーカス 『共犯』

ホアンは孤独だ。 傷つき、ささくれ立った指の爪に巻かれた絆創膏は、 彼のついた嘘の数そのものだ。 「嘘も信じれば真実になる」。 そううそぶくホアンの“発言”には、掴みどころがない。 投身自殺の現場で、血まみれになった女子高生シアに 目が離せない彼は、死に魅了されているかのようだ。 降りしきる雨の中、いきなりそのホア…
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REVIEW 『ジミーとジョルジュ 心の欠片を探して』

複雑な性格を抱えたふたりの男の運命的な出逢いだ。 第二次大戦後、間もないアメリカの西部では、 先住民のジミーとヨーロッパ出身のジョルジュは、“余所者”だ。 デプレシャンは、ジミーが属するスピリチュアルな居留地や すべてが制御された病院の静謐と対照的に、 ヨーロッパの学会で精神科医として認められない 苛立ちを紛らわせるかの…
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REVIEW 『パーソナル・ソング』

「あなたの好きだった音楽は?」。 ダン・コーエンの問いかけはアルツハイマー症患者にとって、 魔法の言葉となる。 しかし、全米の患者ひとりひとりにそれを訊ね歩くのは、至難の業だ。 「アメリカの介護人は優秀だ」と医師は語るが、 そこまで介護人と患者が一対一で向きあうのは、 たとえどの国であったとしても理想主義にすぎる。 …
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REVIEW 『ベイマックス』

名はキャラクターを表わす。 言うまでもなく、ヒロは「HERO」のダブルネーミングであり、 そしてタダシは、正義”を体現者している。 タダシは決して人を傷つけないロボットを開発した。 ロボットバトルにしか興味のない弟を歓ばせるために。 初めて、大学入学という目標に情熱を燃やすヒロが、 “教授が驚く発明”のアイディアに行…
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REVIEW 『ストックホルムでワルツを』

60年代初頭のニューヨークのジャズクラブで、 たとえそれが息ピッタリな絶妙のセッションであったとしても、 メンバーが白人女性歌手と黒人演奏家による“競演”ならば 観客は露骨に嫌悪をあからさまにした、まだまだ保守的な時代だ。 それに加え、憧れだったエラ・フィッツジェラルドに 「真似ではなく、自分の気持ちで」と一刀両断されたモ…
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REVIEW 『幸せのありか』

マテウシュは自分の感情が“発見”されることを、 物心ついてからおよそ20有余年間、待ち続けていたのだ。 脳性麻痺が原因で、会話することも、 立って歩くことも不可能と診断された家族に、 息子の望みを推し量る術があっただろうか。 いや、マテウシュ自身こそが、自由の利かない身体で 幾度となく意志を表明することを試みつつも、 …
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」アジアの未来 『遺されたフィルム』

出来事には、当事者の数だけ真実がある。 ソポンが“不良”のヴィエスナと付きあっているのは、 何も軍人の父に対する反撥だけではない。 「何を望んでいるのか判らないけど、何を望んでいないかは判る」。 それは、未だに「女は脱脂綿」と男尊女卑の考えが蔓延る社会で 息ができない、ひとりの若い女性の普遍的な自由への渇望だ。 廃墟…
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REVIEW 『ニューヨークの巴里夫(パリジャン)』

グザヴィエは混沌を生きる旅人だ。 『スパニッシュ・アパートメント』で抱えきれない程の 旅行鞄を引きずってバルセロナの街中で立ち往生した彼は、 それから12年後、幼い2人の我が子の手を握って、 ニューヨークの路上をひた走る。 スペインのバルセロナ、 ロシアのサンクトペテルスブルク(『ロシアン・ドールズ』)に続く、 セ…
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REVIEW 「第27回東京国際映画祭」ワールド・フォーカス 『黄金時代』

蕭紅は振り返る。 「20歳から根無し草だった。幸せではなかった」と。 まるで彼女は、幸福を探して激動の中国大陸を “根無し草”のごとく放浪し続けたかのようだ。 子供の頃、樹の枝から燕の卵を取ろうとして、 巣ごと地面に落として台無しにしてしまうように、 彼女の幸福は掴みかけたと思った途端、 いつも掌からこぼれ落ちてしまう…
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