テーマ:REVIEW~映画祭

REVIEW 「第32回東京国際映画祭」アジアの未来 『50人の宣誓』

裁判所に向かう一族郎党50人を乗せたバスは、彼らの生命を司る運命共同体そのものだ。健常者のみならず中には障害を抱えた者も同乗し、ひとつのコミュニティの様相も孕み、その一方で妹を殺されたラズィエが扇動する、加害者の死刑に向けて“ひた走る”狂信者に導かれた原理主義の一行にも映る。とはいえ、一族の中に3年前に殺された犬の恨みに抱え続ける叔…
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REVIEW 「第32回東京国際映画祭」アジアの未来 『エウォル~風にのせて』

チェジュ島のカフェのオーナーはソウォルに言う。「欲張るな、食っていければいい」。競争社会に倦み病んだ都会人にとって、青く広い空と果てしなく続く海に囲まれた島の生活は、本来の自分自身を取り戻す癒しの空間となり、その実感は観る者の胸にもじわり沁み渡っていく。 ソウォルは彼女を訪ねてエウォルまでやって来たチョルを、「こんないい店が他…
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REVIEW 「第32回東京国際映画祭」コンペティション 『ネヴィア』

「この生活から抜け出せる?」。ネヴィアは叔母に訊ねる。不貞腐れたようにぶっきらぼうなネヴィアは大人びて見えるが、まだ17歳だ。しかし、ゴミ拾いの仕事をしながら近所の住民とも顔馴染みの彼女は年配者の面倒見もよく、彼女たちから差し入れをしてもらえるような愛嬌もある。妹をカートに乗せ、ナポリの貧民窟を疾走するときのネヴィアの表情は、年齢よ…
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REVIEW 「第31回東京国際映画祭」コンペティション 『詩人』

「彼は私を必要としているの」 芸術家にとって、いかに創造の女神、“ミューズ”の存在が運命を左右するのか?わざわざ電車に乗って、いそいそと炭鉱まで出向き、出来立てのスープを夫リー・ウーに届ける妻チェン・フイは、彼の幸福のためなら自身の出世を投げ打っても何の後悔もない。 大学に進学する機会を、夫の世話をすることを理由にふいにする…
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200w REVIEW '18 「ロシア・ソビエト映画祭 『五つの夜に』 」

“戦中派”の奪い去られた青春の深い悔恨。 「未来の妻は待っているわ」。 信念を貫いたとはいえ、大学を退学し、 運転手となったサーシャには、 タマーラを迎えには来られなかった。 “雪解け”の気配に、 彼らも過去を振り返る余裕が生まれたとはいえ、 モスクワの共同住宅にプライヴァシーは存在せず、 “自由”を謳歌する新世代のカー…
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200w REVIEW '18 「EUフィルムデーズ 2018」 『緑の丘のミステリー』

少年たちは好奇心旺盛だ。 穏やかな日常に潜む闇に、 怖れ脅えつつ覗き込まずにいられない。 幽霊やお化けといった“空想”にすぎなかったそれが、 その夏、村を騒がせる泥棒であり、 ココにとっては愛犬を毒殺した憎っくき犯人と、実態を帯びる。 夏休みとは裏腹な不穏で重苦しい影を、 生意気盛りの“少年探偵団”の奮闘が吹き払う。 「…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」 『ラスティー・ボーイズ~ビバ老後!~』

年金で老後の生活を立て直せる可能性があるとは、ルクセンブルクの高齢者政策は予想以上に充実しているのだろう。老人ホームで入居者たちは、厳しく管理され、食事も不味いと、不満だらけではありながら、それでも手厚い介護を受けながら、何不自由のない生活ができている、ように少なくとも見える。なぜならそんな彼らに比べて、息子や娘たちの生活はままなら…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」 『マッド・メアリー』

メアリーは自分が何者なのか判っていない。自分の感情をコントロールできないのもそのせいだ。母はまだ自分が女であることに執着している。きっと幼い頃から、母親らしい愛情にも恵まれることなく育ったに違いないメアリーが、愛を希求していることは間違いない。しかし、それをどのように表現していいか判らない。ましてや自身のセクシャリティに直面して、い…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」 『鉱夫』

「アリヤ、アリヤ」。少女の呼び声が追想のように闇に閉ざされた坑道の奥深くから響き出ずる。 アリヤは勤勉な鉱夫であり、家庭では善き父親だ。しかし彼が時に垣間見せる頑なに感情を閉ざしたような無表情には、たとえ愛する妻でさえも立ち入れない彼だの領域があるように思える。彼の心の奥底には、故郷スレブレニツァの大虐殺の悔恨があるのだ。 …
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」 『キャスティング』

すべての混乱の原因は、監督ヴェラの優柔不断だ。4度目のオーディションに呼び出された女優は「毎日、彼女に振り回されている」と苛立ちを露わにするが、撮影の現場ですべてのカードを切るのは、監督だ。たとえ“振り回され”ようとも、監督の覚えめでたくなければ、キャメラの前に立つことは許されない。即興のように機動的に動く手持ちキャメラの映像が、現…
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REVIEW 「フランス映画祭2018」 『トマ』『モカ色の車』

『トマ』 当たり前の憂鬱な日常が、些細な偶然によって揺らぐ。壊れたコーヒーメーカーから染み出たコーヒーがキッチンペーパーを浸すのは、その予兆のようだ。客の影さえない大型家電店の店員が、同僚にしか言えない不満を吐き出している。誰もが日々、ストレスに苛まれている。 アンヌがその店員に告げた電話番号は、15年間音信不通の息子トマの…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」 『スワッガー』

クロード・ドビュッシー校に通う移民の子供たちは、白人のフランス人のことを“生粋のフランス人”と呼ぶ。彼らは口々に、“生粋のフランス人”に会ったことがないと語る。 パリ郊外のオルネーは、かつてはそんな“白人のフランス人”が住んでいたが、アラブ人や黒人が移住してきて、次々に引っ越していったと子供たちはまことしやかに話すように、今や…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」『ソラリスの著者』『寄せ集め』

『ソラリスの著者』(写真) 膨大なアーカイブの断片をモザイクのように繋ぎ止める、そんな気の遠くなるような地道な作業を通して、監督のボリス・ランコシュは、謎と矛盾に満ちたひとりの作家の人生を辿る。ユダヤ人である彼の生涯は、ドイツとソ連に挟まれて紆余曲折を遂げたポーランドの歴史の映し鏡のようだ。 スタニスワフ・レムにとって医師だ…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2018」『キッツ先生の子供たち』

オランダで移民の流入はもはや社会問題では片づけられない、れっきとした現実だ。そして、映画を観るに、移民の受け入れ態勢は充分のようだ。 しかし、監督のペトラ・ラタスター・ジッシュとペーター・ラタスターは、ナレーションや字幕等の補足説明を一切排除し、キャメラもオープニング以外、学校内に留まることもあり、果たして周囲の人々がその現状…
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REVIEW 「チェコ映画の全貌」 『厳重に監視された列車』

「チェコ人は恥知らずか?」。メンツェルは銀幕の向こうから悪戯っぽく観る者に問い質す。「労働者を小馬鹿にした」曾祖父、悠々自適の“老後”を送る父を見習って、「他人があくせく働いている中で、楽に暮らす」ために鉄道員になったミロシュとはいえ、初めて制帽を被ったときの高揚感をメンツェルはダイナミックに映し取る。 いかなる社会状況でも、…
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200w REVIEW '17 「チェコ映画の全貌」 『アデラ/ニック・カーター、プラハの対決』

モーツアルトの子守歌を追い払うかのように スラプスティックな劇伴が主旋律を乗っ取り、 ホームズやエジソンとも“親友”という私立探偵の 敏腕ならぬ放埓な混沌の原因は、 泥まみれ、汗まみれになっても二枚目に徹する人を喰った彼のドジだ。 ピルスナーに目がない大喰い警部が カーターと失態の数々を受け流しながら名相棒となり、 二人の…
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REVIEW 「チェコ映画の全貌」 『ほうきに乗った女の子』

「人間は頭が変なんだ」。そう魔法学校の用務員が言うように、たしかにサクサナは魔法学校では怠け者の問題児だが、「老婆の耳」を餌に彼女を騙して、魔法で悪戯をさせる人間の悪ガキたちのほうが余程、性質が悪い。それでも、いざとなればそんな悪ガキたちの窮地を無邪気にも救出するサクサナに対して、彼らはさらに意地悪で彼女の足を引っ張るのだ。 …
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REVIEW 「チェコ映画の全貌」 『ホップ・サイド・ストーリー』

「労働者でも食堂では礼儀正しく振る舞う」 そう宣言するハンケの盛装は集団農場で十把一絡げに括られる若者の反抗であり、尊重されるべき個人の自由への欲望だ。「人間らしい服が着たい」。そんな彼女に足を引っかけてドレスを台無しにするホンザは、いくら彼女に横恋慕しようともその時点で、考え方も住む世界もまったく違うのだ。 シネスコの画面…
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REVIEW 「チェコ映画の全貌」 『夜のダイヤモンド』

懸命に疾走する2人の青年を、手持ちのキャメラは併走するように追う。その彼らに肉薄する映像の迫真の臨場感に、私の視線は2人が何から逃げているのか、何のために走っているのか、判らないながらも、ひたすら釘付けになってしまう。 若者たちの逃亡劇は、息も絶え絶えの死に物狂いの様相を呈し、互いにそれぞれの身体を支えあうように歩みを進め、銀…
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REVIEW 「チェコスロヴァキア・ヌーヴェルヴァーグ」 『パーティーと招待客』

いかにもブルジョア然とした気取りと享楽が漂うピクニックが、正体不明な男たちによる拉致まがいの暴力によって破られる。木漏れ日の下での官能的な宴は、たちまち不条理の白昼夢へと一転しても、彼らは目の前で何が起きたのか定かに掴めない無抵抗感が、政治に呑み込まれる庶民の無力を想起させ、思わず観る者の身がこわばる。 パーティグッズを抱えて…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2017」 『すべて売り物』

いきなりモノクロームの画面に、ひとりの男性が突然、列車に飛び乗り損ね、轢かれる姿が映し取られ、観る者の胸を衝くが、そこで銀幕はカラーに転じ、それが映画撮影中の監督自ら挑んだスタントの一場面であることが判る。危険な撮影を終えたとはいえ、しかし現場の不穏な緊張感はたゆむ気配はない。本来、このスタントをするはずだった主演男優がいつまで経っ…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2017」 『エディットをさがして』

女性写真家として1930年代のイギリスで活躍したエディット・デューダー・ハート。その彼女の死後、実は冷戦時代、KGBのスパイだったことが明らかになる。親族の誰一人として知らなかったその“二重生活”を、彼女の従甥であるユンク監督が、当時のドキュメンタリー、エディットを知る人物へのインタヴュー、そして当時を再現したアニメーションで辿るが…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2017」 『ナイトライフ』

「この国で何かがきちんと明るみに出たことがあったかしら?」。レアの親友ターニャはさらに続ける。「犬より人間のほうが危険よ」。その彼女の言葉さながら、映画もまた深夜の路上に“犬に噛まれた”弁護士の血まみれの身体を突然、露わにした後、幾つもの証拠の周辺で真実は闇の中に葬り去られる。 真夜中のスロヴェニアの首都リュブリャナは冷え冷え…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2017」 『いつまでも一緒に』

娘がトイレに投げ捨てるのは、ジャンクフードだけではない。誰にもぶちまけることのできない両親への不満だ。そんなトイレが詰まり、部屋が汚物まみれの醜態をさらすまでに、そう時間はかからない。 監督のリナ・ルジーテはつねにそんな家族の表情を正面からとらえる。彼らは決して視線を絡めあわせない。そこにもすでに嚙み合わない家族…
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REVIEW 「第29回東京国際映画祭」コンペティション 『シェッド・スキン・パパ』

父が懸命に生きたからこそ、今の自分が存在する。 それなのに、最愛の妻に先立たれ、 アルツハイマーとなった老父ヤッホンに 息子リッハンは呆れ顔で呟く。 「目の前の男のようには生きたくない」。 とはいえ、この父にしてこの子あり、だ。 男やもめとなり“恍惚の人”となった父と、 借金まみれで離婚危機に直面した息子。 そんな父…
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REVIEW 「第29回東京国際映画祭」コンペティション 『7分間』

“尊厳”だけでメシは食えない。 しかし、労働者1人にとっては 「たかが7分」の休憩時間の短縮でさえも、 会社側にとっては「月900時間のタダ働き」となれば、 それはまさに搾取だ。 40年前には1時間あったという休憩時間は、 大企業の“上から目線”の短縮によって、 感謝とともに労働者たちに徐々に受け入れられ続けたのだ。 …
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REVIEW 「第29回東京国際映画祭」アジアの未来 『ブルカの中の口紅』

監督のアランクリター・シュリーワースタウは、 ロマンス小説のヒロイン「ロジ」を、 インド社会で自由を求める女たちの欲望の象徴として 物語の核に据える。 女は“夢見る”ことは許されても、 それを実行に移すと“ふしだら”と断罪される。 それはボパールという町が 保守的な地方都市だからというわけでなく、 今もインド社会に深…
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REVIEW 「SSFF & ASIA 大阪」 「フランス映画祭2016~短編作品集」Part.2

『スピーディー』 浮気の発覚に身の危険を察知したとき、 人は超人的な能力を発揮するらしい。 男の場合、不倫直後のホテルの窓から、 疾走して10分ほど離れた自宅の窓に置かれた 妻の赤い電話帳をズームで見つけるのだ。 その劇画タッチが、この映画のコメディのトーンを引っ張る。 ホテルの一室での妻からの電話に、 愛犬の鳴き声…
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REVIEW 「SSFF & ASIA 大阪」 「フランス映画祭2016~短編作品集」Part.1

『映画館の女たち』(写真) 失恋した親友シルヴィーを慰めるために 映画に誘い出す。 そんな女性ふたりの浮世離れした友情関係が、 彼女たちの夢見がちな心を観る者に印象付ける。 シルヴィーは男関係が長続きせず、 ジョセフィーヌも息子程、 年下の恋人と別れたばかりだ。 そんなジョセフィーヌがオフリュスの 『忘れじの面影』…
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REVIEW 「EUフィルムデーズ 2016」 『ロストックの長い夜』

早朝、前夜の騒乱の瓦礫の中から空き瓶をカートに詰め込む子供たちは、まるで大人たちの暴挙の後始末をしているかのように映るが、果たして彼らは将来の希望となるのか。監督のブルハン・クルバニは、92年にロストックで起きた人種差別事件を見つめつつ、そこに現在にも蔓延る移民排斥の不寛容の根の深さを炙りだす。 若者たちは、外国人によって“仕…
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