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200w REVIEW '15 「第28回東京国際映画祭」コンペティション 『ガールズ・ハウス』

「サミラが死んだ」。 たとえそれが真実でも、 一方的に携帯電話を切る理由にはならないだろう。 彼女たちには、往々にして事実確認の前に 自身の“妄想”で周囲を顧みず突っ走る軽率さがある。 サミラの父は婚約者マンスールに 「お前のせいで娘は死んだ」と暴言を吐くが、 遺族たちには突然の死に取り乱した素振りは見えず、 死因も「路…
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200w REVIEW '15 「第28回東京国際映画祭」アジアの未来 『俺の心臓を撃て』

院長の甥の愚劣な虐待は、 時代錯誤な精神病院の凄惨を強調し、ただあざとい。 なぜチェ看護士は、 スミョンが「世間や自分から“逃げる”病気」と認識しながら 電気治療を施そうとするのか、 スンミンと家族との面会になぜ無関係なスミョンを同室させるのか、 相次ぐご都合主義に意気粗漏する。 スンミンの芝居がかった自己韜晦もくどく、 …
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200w REVIEW '15 『007 スペクター』

C曰く、「ドローンと監視キャメラ」の時代、 奇想天外の荒唐無稽は赦されないとはいえ、 色気を排し、リアリズムに徹した007には少しばかり息が詰まる。 知能犯の悪役もピカレスクな魅力に欠けるものの、 “死者の祭”のワンカットシーンや、 その俯瞰キャメラで軽々とビルを飛び越えるボンドが、 崩壊した建物のソファに座り込み、何食わぬ…
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200w REVIEW '15 『最高の花婿』 Part.2

両父親の猛反対にあってなお、 ロールとシャルルが結婚式を挙げる理由はない。 金に飽かした晴れ舞台は、新興ブルジョワの見栄とエゴだ。 シャルルが冗談交じりに漏らすように、“事実婚”すればいいだけだ。 それにしても、シャルルの父の仏人に対する敵愾心が コメディの愛嬌とは無縁に、 クロードと泥酔するまで鈍化する笑いのリズムが惜しい…
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200w REVIEW '15 『最高の花婿』

毎年のように非仏白人と結婚する娘たちの祝宴に出席するたび、 ヴェルヌイユ夫妻の礼服は喪服さながらと化す。 差別主義者ではないと抗弁する程に、 ド・ゴール支持の保守派を自認するクロードの“差別”が露わになるのが シチュエーションコメディの可笑しさだが、 実のところそれは仏白人中流階級の偽らざる本音だろう。 ユダヤ人は攻撃的、ア…
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200w REVIEW '15 『虹蛇と眠る女』

漆黒の闇が迫る中、娘の名を絶叫するキャサリンは、 野性の大地で煩悶する土着的な神話性を体現する。 灼熱の中、彼女は衣服を脱ぎ捨て、自身の原罪に抗う。 リリーの色情狂的な放埓は、 情緒不安定のたびに男に擦り寄る母譲りだ。 マシューは「俺と似てない」とリリーの出生に疑問を抱くが、 キャサリンも夫に娘への性的虐待を投げかける。 …
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200w REVIEW '15 「第28回東京国際映画祭」コンペティション 『FOUJITA』

モンパルナスにひちりきが鳴り響き、 金髪で腰高な花魁道中の“フジタナイト”は、 時代の仇花のような倒錯美だが、 その時代、「絵を売るため名前を売る」と 東洋人画家として一世を風靡した彼の、それは処世術だ。 巴里時代、ベッドに眠るユキの白い肌が 闇の中からほんのり浮かぶのに対して、 太平洋戦争最中の日本では水墨のような黒味が…
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200w REVIEW '15 『猫なんかよんでもこない。』

風間のオーヴァーリアクションが、 兄貴に“棄てられた”ミツオの独り言のごとく部屋に反響する。 兄貴が2匹の野良猫を“拾った”のは、 自身の結婚が前提だったのだろう。 “面倒見のいい”ミツオにとって、 猫の世話は夢を諦めた現実の支えとなる。 しかし、クロを近所のボス猫にとは、彼のエゴだ。 兄貴の引越しからミツオの漫画家志願ま…
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200w REVIEW '15 『ロブスター』

デヴィッドには“兄”を蹴り殺されて 涙するだけの感情がまだ残されている。 だから、“心のない女”にそれを嘘だと叱責され、反逆するのだ。 独身者は隔離の管理社会は、 少子化社会では絵空事と言い切れないものの紋切型で、 違反者は動物にという突拍子のない罰に、私は脱落だ。 森の中の逃亡者グループのカップル禁止は、 人口抑制政策へ…
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200w REVIEW '15 『サウルの息子』

スタンダードのキャメラはサウルを追い続け、 私たちは彼の肩越しのわずかな映像から状況を“推測”するしかない。 “シャワー室”に押し込められたユダヤ人たちの絶叫も ナチスの銃声も、聞こえてくるのはすべて銀幕の外からだ。 “ゾンダーコマンド”としてかろうじて生命を繋ぎ留めるサウルに、 “息子”は存在していたのか。 監視の目を盗み…
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200w REVIEW '15 『カプチーノはお熱いうちに』

時は瞬く間だ。 エレナが“カフェ・タランチュラ”のビアサーヴァーでの仕事中に 昼から夜へ移り変わらせたオズペテクは、 改修前の“ガススタンド”の店内を見渡すエレナに13年の歳月を重ね、 病室を抜け出しアントニオに連れ出された冬の海岸で、 初デートの夏を甦らせる。 妻の病に暴力でしか抗えない無骨なアントニオに 「あるがままの…
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200w REVIEW '15 「第28回東京国際映画祭」日本映画スプラッシュ 『ケンとカズ』

父になろうとする男と、母の呪縛から逃れられない男。 ボスが揶揄するように、カズはケンを“愛していた”のだろう。 だからケンと早紀の新生活に嫉妬し、 真面目にと務める彼を挑発する。 幼児虐待のトラウマに苦しむカズは愛し方を知らないが、 その咎で母を罵倒し続けても何の解決にもならない。 「まともな父になれるはずない」「乳離れでき…
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200w REVIEW '15 『海難1890』 Part.2

つまり“真心”とはこういうことだ。 「海で遭難した人間は何があろうとも助ける」という漁師の心意気。 棺を揃えるとの公約に首を傾げる藤本に 「貧しい村だからですか」と反撥する村長の意地。. 犠牲者の家族を思い、遺品を磨く地元の女たちの誠実。 それらは「日本人を救出したことは誇りだという国民を私も誇る」と明言した トルコ首相の寛…
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200w REVIEW '15 『海難1890』

和歌山の漁民は、 座礁したトルコ船員の救出に自らの糧を投げうって尽力し、 イラン革命の動乱時、帰国を望むトルコ人は、 祖国から遠く離れた日本人に救出機の座席を譲る。 史実と知らなければ絵空事と疑ってかかるような 犠牲的精神に基づく両国民の“真心”に説得力を付与するため、 田中監督は田村が武道ならムスタファはフェンシングという…
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200w REVIEW '15 『愛しき人生のつくりかた』

夫の葬儀に遅刻したロマンを 「お祖父ちゃんはあなたが大好きだったわ」と抱くマドレーヌもまた 孫息子を溺愛しているのだろう。 老人ホームに飾られた牛の絵に、椅子を並べ哄笑するふたりだから、 祖母はロマンにだけノルマンディから葉書を贈り、 現れた彼にこう微笑むのだ。「遅かったわね」。 食事にさえ迷うミシェルに対して、マドレーヌは…
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200w REVIEW '15 『俳優 亀岡拓次』 Part.2

砂漠を彷徨うだけの撮影後、 スペックから砂漠に咲く花を手渡された亀岡は、告げられる。 「きみは好きに歩いていけばいい」。 左手で書いた亀岡の震えたサインが、寒風で壁から吹き飛ばされるように、 彼の安曇への淡い恋も冬の夜空に霧消する。 「独りは淋しいですから」。 そう漏らす亀岡には、バーのママならずとも怪訝だ。 小用時にズボ…
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200w REVIEW '15 『俳優 亀岡拓次』

目立たぬ脇役俳優の彼に仕事が絶えないのは、 役の大小に拘りなく、 撮影中止でも意に介さない飄々たる柔軟さゆえだ。 しかし、仕事が無いときは酒場に入り浸りの亀岡が、 ほろ酔い加減で見る夢は、 派手なアクション演技も満更でもないように、 野心が無いわけでもない。 「素人なの?」と呆れられた憧れの夏子の演技指導に懸命に挑み、 …
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200w REVIEW '15 『はなちゃんのみそ汁』

滝藤の柔軟な身体表現が、軽妙でテンポ良い笑いを誘う。 彼演じる“ぼんやり”した飄々の裡に厚い情を秘めた安武だからこそ、 千恵は運命を託したのだろう。 「死ぬ気で産め」。 膠原病の父の激励は、我が子が闘病の支えとなる実感であり、 医師の「同じ患者の希望に」が不安に慄く千恵の背中を押す。 “金食い虫”な伊藤の民間療法への傾倒は私…
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200w REVIEW '15 『完全なるチェックメイト』

チェスが究極の心理戦なら、 「必ず打ち負かす」と気色ばんだとき、スパスキーはすでに敗者だ。 ボビーは「チェスは外交じゃない、勝負だ」と息巻くが、 世間は彼とスパスキーの一戦を東西冷戦に仮託し、 反逆のロックスターのようにボビー人気を煽る。 しかし、スパスキーが国を挙げた支援の一方、 ボビーは安モーテルでの宿泊が関の山だ。 …
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200w REVIEW '15 『99分、世界美食めぐり』 Part.2

「知的な食べ方がある。料理は芸術なんだ」とヘイラーは力説するが、 結局のところ、その評価は本人の嗜好次第だ。 生まれ育ちで味覚の研ぎ澄まされ方も違うだろう。 美食家のテーブルマナーも必ずしも褒められたものばかりではない。 アイステの押し戴くような日本料理への接し方はむしろ面映ゆいが、 およそ20分滞在の鮨屋に大枚2枚はたいて当…
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200w REVIEW '15 『99分、世界美食めぐり』

1日掛かりの旅の挙句、 一口で終了の“美食”を堪能するのは、贅沢か、徒労か。 ミシュランの三ツ星レストランを制覇したとヘイラーは鼻高々だが、 私に言わせるとガイド本に縛られているだけにすぎず、 むしろ自身の美食サイトの開設に息巻くプロトニキの野心の方が好ましい。 “食への執着”を自覚する彼は、 「ブログを書くのは注目されたい…
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200w REVIEW '15 『サンローラン』 Part.2

イヴにとってジャックは禁断の蛇だ。 スランプに陥った独り寝のベッドで、 イヴの全身を数匹の蛇が這う。 ベルジェから贈られた絵画に描かれたプルーストのベッドに、 「この中に潜り込みたい」と呟いた安らぎは、彼には無縁だ。 イヴがカーテンを開け、再びスケッチの木炭を握るのは、 ベルジェの献身ゆえではない。彼は逃げた。 イヴにとっ…
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200w REVIEW '15 『サンローラン』

イヴがジャックの風変わりな屋敷に足を踏み入れるように、 あるいは夜の繁みに分け入るように、 ボネロは手紙マニアだった彼の 定番から視線をずらした未知なる闇に、私たちを誘う。 76年から時を遡る物語では、 イヴはすでにオートクチュール界に確固たる地位を築きながら、 「人生を生きていない」と告白する孤高の王だ。 さらにボネロは…
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200w REVIEW '15 『しあわせへのまわり道』 Part.2

見合い結婚でも 「夫婦としてひとつの魂になる」と平然と言ってのけるダルワーンは、 ウェンディにはカルチャーショックだ。 「ターバンを外すと私自身でなくなる」。 しかし、敬虔なシク教徒の彼も、聖人君子というわけではない。 教育を受けず、生活習慣も異なる新妻に途方に暮れる彼に、 ウェンディは言う。 「言葉より、頬を包む掌よ」。…
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200w REVIEW '15 『しあわせへのまわり道』

「運転することは自由を得ることだ」。 ダルワーンはこう生徒に説く。 教養高いウェンディが、これ程みっともなく夫に未練を残すのは、 それが青天の霹靂だったからだ。 “夫より言葉”を愛し、 彼の愛人が自分のお気に入り作家だった節穴ぶりの彼女が、 予期せぬ自由を満喫するには、ちょっとした“味見”が必要だ。 車中でダルワーンと会話…
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200w REVIEW '15 『黄金のアデーレ 名画の帰還』

「なぜかあなたが好きになった」「“少年”にすべてを任せるわ」。 相容れなかった二人の“共闘”は、 オーストリア出身のユダヤ人という同じルーツへの自覚だ。 「金のため」弁護を引き受けたランドルフは 曾祖父母たちが眠るホロコースト記念碑に慟哭し、 マリアは両親を“見棄てて”亡命した慙愧に再び向きあう。 「オーストリアでは勝訴でき…
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200w REVIEW '15 『マイ・ファニー・レディ』

3万ドルで娼婦の人生を“変える”アーノルドの太っ腹が、 “念入り”な彼の女性への博愛精神ならば綺麗事すぎるが、 これはボグダノヴィッチのハリウッド黄金時代へのオマージュなのだ。 一堂が会したイタリア料理店でウェイトレスの「今日は転ぶ客が多いわね」、 バーニーズで試着したスーツをメイシーズで盗品扱いされる デルタの逆上には爆笑だ…
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200w REVIEW '15 『禁じられた歌声』

「歌は禁じる。女性は手袋を」。 “聖戦”を標榜する原理主義者の“お触れ”に、青年兵士は呟く。 「これじゃイスラムは嫌われる」。 少女を誘拐して妻にした兵士を、 教義に沿って説得する地元の有識者に、 自らの理屈で正当化しては、彼らの宗教は大義名分に落ちる。 なぜ、ギダンは銃を握ったのだろう。 憎しみは悲劇しか生まないなら、彼…
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200w REVIEW '15 『メニルモンタン 2つの秋と3つの冬』

まだ“青年”と自分に言い訳する33歳のモラトリアムは、 「本気で何かが起きなきゃならない」と独り言ちる。 そんなアルマンが横たわるストレッチャーの脇に立つアメリを、 「ローアングルの彼女はとても美しい」と意識朦朧の最中、 呟く自由気儘な飄々が、次第に深い焦燥に取って替わるのは、 ベベデール監督が彼ら同世代の苦悩を共有しているか…
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200w REVIEW '15 『アンジェリカの微笑み』

ドゥロ河の流れは絶えずして、元の水にあらず。 ショパンのピアノ曲とともに現出する闇夜の沿岸の街に、 灯りが慎ましく瞬く。 河はそこに生きる人々の営みを懐深く見守るかのようだ。 ポルタシュ館に足を踏み入れ、 その異様な装飾美にぽかんと口を開けた瞬間、 イザクの冥府への扉が開かれたのだろう。 彼のキャメラに向けられたアンジェリ…
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