テーマ:REVIEW~映画

REVIEW 『いとしきエブリデイ』

人生は、一刻一刻のたしかな瞬間の積み重なりだ。 時が刻まれ、季節がめぐり、歳月は形づくられる。 逆らえども絶えず降り積もる日々の重さが、 家族の実感となって、 少年たちを現在とは異なる未来へと変容させる。 ノーフォークに暮らす父親不在の一家の5年の軌跡を、 マイケル・ナイマンの奏でる反復のリズムとともに 丹念に映し…
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REVIEW 『ある愛へと続く旅』

アメリカ人青年らしい陽気さを振りまき、 ジェンマの父にも愛されたディエゴの天真爛漫が、 戦火のユーゴスラヴィアに飛び込んでいくたび、 深い影を刻んでゆく。 それは無邪気に一匹狼を気取っていた若き放浪者の理想が、 現実の悲劇の前にはなす術もないことを痛感した敗北の色だ。 彼はキャメラのレンズを通して、 あまりにも多くの死…
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REVIEW 『ザ・イースト』

職務に忠実に“ザ・イースト”の次の標的となる企業名を報告しても、 調査会社は「顧客じゃないから深入りしない」と 見て見ぬふりを決め込む。 一方の“ザ・イースト”は、人体への悪影響を隠蔽し続ける 大企業の重役陣に、「目には目を」とばかりに同じ恐怖を味わわせ、 彼らの生命を脅かす。 「自分たちの主義こそが絶対」という意味…
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REVIEW 『シャンボンの背中』

男女の身分差を逆転させた『逢びき』を彷彿させる。 『逢びき』では医師と人妻の関係が、 『シャンボンの背中』では大工と女教師に変じ、 耳に焼きつくラフマニノフのピアノの代わりに ヴェチェイのヴァイオリンが、 人目を忍ぶふたりの不倫関係に劇的な終止符を刻む。 妻と小学生の息子に恵まれたジャンは左官職人だ。 夏の陽光がき…
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REVIEW 『トランス』

ダニー・ボイルは観る者の意表を衝く。 「生命に勝る芸術品はない」とモノローグするサイモンを語り部に、 正統派の絵画強奪サスペンスかと思いきや、 それは彼の初期作品『シャロウ・グレイヴ』を彷彿させる 暴力と血まみれのアクションへと一変する。 その時点で彼の仕掛けるギミックはまだまだ序の口だが、 ストーリーテリングに才長けた…
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REVIEW 『メイジーの瞳』

「何を思ってるの?」 6歳の少女メイジーが創作した“お話”に惜しみない拍手を贈り、 伏し目がちの彼女からはにかんだ微笑を引き出したリンカーンを、 母スザンナは「娘に取り入るなんて」と咎め立てする。 そんな諍いの現場に戸惑いを隠しきれないメイジーは、 母からそう問いかけられて答えるのだ、「何も」と。 しかし、それはメイ…
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REVIEW 『もうひとりの息子』

“取り違えられた”パレスチナ人の息子ヨセフは、 “もうひとりの”ユダヤ人の息子ヤシンに思いを馳せる母オリットに 微笑みながらこう訊ねる。 「生まれてキスもできなかった息子にキスしたくない?」 生まれ育ったユダヤ人としての アイデンティティの崩壊の苦悩に直面しながらも、 なおこうして“育て”の母の胸中を慮るヨセフの優し…
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REVIEW 『女っ気なし』『遭難者』

シルヴァンは人が良すぎる。 それが仇となって、 彼はしばしば罰の悪さを噛みしめてしまうことになる。 たとえば、タイヤがパンクした自転車乗りに声を掛けて、 バーで食事をともにし、終電を案じる彼を 駅まで送りがてらの親切心が裏目に出て、 シルヴァンは飲酒運転の違反切符を切られてしまう。 その夜、モーテルを飛びだした…
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REVIEW 『大統領の料理人』

美食はたちどころに人を魅了する。 豪奢に盛りつけられた料理にナイフが切り込まれ、 その意趣に富んだ断片が露わになっただけで、 私たちはたちまち垂涎を覚えるはずだ。 ジョエル・ロブションの推薦で、 フランス大統領の専属料理人という 大役を仰せつかったオルタンスは、 彼女の助手を務めるニコラにこう教示する。 「料理人…
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REVIEW 『オン・ザ・ロード』

「放浪するだけの旅ってあるのか?」。 ディーンの暮らすデンヴァーを目指すサルは ヒッチハイクして同乗したトラックの荷台で、 季節労働者に半ばこう呆れられる。 壮大なる移動の感覚は、 自己を探求して彷徨う青春そのものだ。 ケルアックの原作が、世代を超えて読者に愛されてやまないのも、 その不変性にある。 そしてその無…
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REVIEW 『アンコール!!』

地元のコミュニティセンターでの 合唱団の練習から帰宅した妻マリオンが、 その夜、「アー」と発声練習するその舌先に、 夫のアーサーがそっと薬を投げ込む。 その息の合った軽妙なやりとりに、 彼ら老夫婦の愛の歳月がたちどころに垣間見え、 私の胸は熱くなる。 マリオンが参加する高齢者たちの合唱団、 その名も“年金ズ(OA…
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REVIEW 『箱入り息子の恋』

「不様になりなさいよ」。 穂のか演じる女性同僚にそう檄を飛ばされて、 文字通り、心身ともに失恋の痛手ににしょげ返る健太郎は 菜穂子の棲む町へとひた走る。 この衝動的なアクションのひたむきさこそが、 恋の魔力の底力だ。 彼女は恋する相手からいくら非情に撥ね退けられても、 それが衆人環視の下であっても、 率直に恋情を…
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REVIEW 『最後のマイ・ウェイ』

まるで生き急ぐかのように精力的な クロードのアーティストとしての原動力は、 “チビで悪声”ゆえのコンプレックスと、 「大道芸人の息子は要らん」と彼を拒絶した父からの認証願望だ。 それゆえに“ザ・ボイス”シナトラの「マイ・ウェイ」の唄声は、 彼をエジプトの少年時代へとタイムスリップさせ、 窓辺に佇み微笑むのは、 クロード…
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REVIEW 『もうひとつの世界』

生後間もない赤ん坊のみずみずしい生命力が、 エルネストとカテリーナに忘れかけていた生きる情熱を じわり甦らせる。 ふたりは似た者同士だ。 父からクリーニング店を引き継いだエルネストは お得意客にも“ツケ”は許さないシビアな商売人だ。 従業員の女性たちの名前も覚えようとはせず、 自宅と職場を往復するだけの味気ない日々…
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REVIEW 『ハートの問題』

父の自動車工場を受け継いだアンジェロは叩きあげの苦労人だ。 将来のための財テクにも抜かりなく、妻子にも恵まれている。 一方のアルベルトは、脚本家としてスランプに陥り、 家賃を払う金銭的な余裕さえない。 ステファニア・サンドレッリをはじめとする 賑やかな見舞客がひっきりなしに病室に訪れるアルベルトに、 アンジェロは「友だち…
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REVIEW 『天使の分け前』

ロビーの不幸は、これまで彼の暴走を“邪魔”する 大人や友人に恵まれなかったことだ。 留置刑確実の暴行を働いたロビーを、 裁判長は「きみの才能と将来に期待して」と、 社会奉仕活動を条件に釈放する。 その温情が、ロビーの“第二の人生”の始まりを告げる。 恋人レオニーが赤ん坊を出産し、晴れて父となったロビーは、 かつて彼…
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REVIEW 『君と歩く世界』

『真夜中のピアニスト』、『預言者』と 父を越えようともがく息子、 あるいは父性の呪縛を格闘する青年の成長を スリリングに活写した監督オディアールが 『君と歩く世界』で踏み込むのは、 成熟から程遠い“野性の青年”が“父となる”その成熟の軌跡だ。 かつての恋人から息子を“押し付けられた”アリは、 彼自身がその日暮らしの…
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REVIEW 『3人のアンヌ』

一人目は女性監督に相応しいおやかな優雅さで、 二人目には束の間の不倫に少女じみた茶目っ気がこぼれ、 三人目には失恋の自暴自棄にも似た危うい狂気が影を差す。 そんな同型異種な3人のアンヌを繋ぐのは、 浜辺に撃ち棄てられた焼酎の空き瓶と、 生垣に隠された青い雨傘だ。 オープニングで、借金に追われた女性脚本家の書くヒロイン…
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REVIEW 『スカイラブ』

思春期真っ只中の14歳のアルベルティーヌの純情が、 微笑ましくも愛らしい。 丸眼鏡をかけ、少しばかりぽっちゃりしたアルベルティーヌは、 自分に自信のなさそうな臆病さをちらつかせながら、 その裡に誇り高き自意識を潜めている。 何よりそこが頼もしい。 同年代のライバル心からか、 従妹に対して言いたいことは澱むことなく発…
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REVIEW 『建築学概論』

スンミンとソヨンの高校時代と現代との あまりにも似ても似つかない2人一役にしばらく当惑するものの、 丁寧かつ大胆に過去と現在を行き来させるイ・ヨンジュ監督は、 それぞれの初恋の記憶の補完と、 済州島のソヨンの実家の改築作業を重ねあわせながら、 いつしかその“2人一役”が私の胸で合致していることに気づく。 それは、監督がそ…
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REVIEW 『偽りなき者』

鬱蒼と曇る森で、ハンターの銃弾を浴びた鹿がゆったりと斃れる。 美しささえ湛えたその生命の儚さは、 その後、一夜にして四面楚歌となるルーカスの 脆い運命を暗示しているかのようだ。 幼馴染みのブルーンは、ルーカスに告げる。 「おまえは寛大すぎる」。 幼稚園のただ一人の保父であるルーカスは、 腕白盛りの子供たちにまとわり…
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REVIEW 『愛、アムール』

キャメラは、朝食のテーブルに座る老夫婦の背中をただ映し撮る。 それだけで、彼らの背後から容赦なく忍び寄る 残酷な老いを観る者にじわり体感させる。 それがハネケの凄味だ。 アンヌの教え子のピアノリサイタルに 昂揚した夫妻の心に冷水を浴びせかけたのは、 何者かによる我が家の空き巣だ。 夫婦が共有した一夜のささやかな幸福…
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REVIEW 『ある海辺の詩人―小さなヴェニスで―』

キオッジャのラグーナで、 異国人の心細さを寄せあうように抱擁するシュン・リーとペーピを、 夕陽の輝きが美しく包み込む。 ペーピはシュン・リーに、今は無き祖国と同じ 共産国出身の懐かしい匂いを嗅ぎ取り、 彼女はペーピに漁師だった祖父たちの面影を重ねたのだろう。 人種も年齢も異なるふたりは、同じ感性で魅かれあったのだ。 …
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REVIEW 『グッバイ・ファーストラブ』

青春の真っ只中を疾走する少女は、 無鉄砲な程、愛に一途で、 しかし少年は自由を求めて、新たな体験に生きる。 1999年2月のパリの路上を、二人乗りの自転車が颯爽と往く。 「愛に生きるの」。 こう言い切るとき、カミーユの瞳は思い詰めた真剣味を帯びる。 髪を切れと恋人のシュリヴァンにからかわれるや、 「切るなら別れ…
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REVIEW 『海と大陸』

灼熱の太陽に照らされたブロンズ色の肌が眩しい。 叔父ニーノから「年齢のわりに幼いな」と揶揄される程、 無垢でナイーヴなフィリッポの太陽に晒されたその褐色の肌は、 彼が懸命に祖父エルネストの背中を追ってきた 若き漁師であることを雄弁に物語る。 一方、都会から島へヴァカンスに訪れた観光客たちは、 生白い肌に退屈そうな享楽…
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REVIEW 『マリーゴールド・ホテルで会いましょう』

開巻早々、手際良く紹介された7人の登場人物が、 ヒースロー空港のベンチで、 その表情に不安と期待を浮かべながら横並びに座るとき、 そのずらり揃った名優陣に、 上質な舞台劇さながらの濃厚な群像劇を期待し、思わず胸躍る。 そうして、無事、デリーに到着した彼らは、 目的地であるジャイプール行きの飛行機がキャンセルされ、 若か…
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REVIEW 『レ・ミゼラブル』

開巻早々、傾いた巨大な船を 潮に浸かりながら縄で引きあげる囚人たち、 その中で全身に疲労の色を深く刻み込んだ ジャン・ヴァルジャンを目の当たりにしたとき、 その壮観な映像世界のスケールに、 トム・フーパー監督は名にし負うこのミュージカル舞台の枷から 解き放たれたと確信してしまう。 ユゴーの膨大な原作を簡潔に切り結ぶ…
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REVIEW 『最初の人間』

階段と路地の間隙を縫うように紺碧の地中海が広がる。 この穏やかで温暖な気候に恵まれた故郷は、 今もコルムリの少年時代の記憶と分かち難く結びつき、 彼の人格を豊かに育んだ。 野犬狩りの檻を解き放ち、その檻に押し込まれた彼は、 アルジェリア人の子供たちの黒い瞳に凝視される。 その日、夜遅く帰宅し、 厳格な祖母から折檻を…
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REVIEW 『人生の特等席』

「ろくでなしのために働いてる」。 ミッキーはこう上司について吐き捨てるが、それはガスも同じだ。 ミッキーの法律事務所は、 彼女の留守を口実に出世コースの梯子から外そうとし、 球団はガスの忠告を無視してボーをドラフトで指名する。 それでもガスはスカウトの仕事を愛している。 長年、その眼で選手を見つめ続けてきたプロの本能は、…
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REVIEW 『思秋期』

深夜、まんじりともできないジョセフの、 寝室を無為に堂々めぐりする足音が天井の軋み音となって、 階下のソファで休むハンナの耳に響き続ける。 ホラー映画さながらだが、それこそが中年男の純情なのだ。 男やもめの自暴自棄な日々を過ごすジョセフは、 彼に助けを求めて突然、我が家に転がり込んできたハンナに、 これからどう向きあえば…
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