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help リーダーに追加 RSS INTERVIEW 「ジャック・オディアール 『真夜中のピアニスト』」

<<   作成日時 : 2005/10/05 00:58   >>

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『真夜中のピアニスト』の主人公トムは、
ジャック・オディアールが初めて自作で描く、大人へと成長を遂げる青年像だ。
これまで、『天使が隣で眠る夜』のマチュー・カソヴィッツは否応なしに世の中に押し出され、
『リード・マイ・リップス』のヴァンサン・カッセルは物語が終わった後、それを予感させたが、
そのテーマがジェイムズ・トバックの『マッド・フィンガーズ』のリメイクとして引き出されたとき、
オディアールの“B級カルト映画”に対する思い入れを尋かずにはいられなかった。
「あらゆる制約を受けることで素晴らしいアイディアが生まれる、そこが好きなんだ。
そして脚本の果たす役割が大きいってところも。
僕が『真夜中のピアニスト』で描きたかったのは、大人になれない男が男になる瞬間だ。
もちろん『マッド・フィンガーズ』にもそれは含まれていて、
トバック版がなければ僕はこのテーマを選ばなかっただろう。
人間は誰もが“誰かの子供”というしがらみのもとに生まれ、
そしてそこからどう脱していくのか。それが成長というものなんだ」

そんな世代交代のドラマは、父が成し遂げられなかったトルコ料理店の借金の取り立てを、
息子のトムがまんまと成功させるシーンで残酷かつ感動的に描かれる。
と同時に、コミカルさも狙ったんだ。
暴力行為はトムの子供っぽさ、幼児性そのものさ。
実は、僕はトムを8歳ぐらいの少年のイメージとして作りあげたんだよ

不動産ブローカーとして働くトムの人生に影響を与えるミャオ=リンが
アジア系女性ピアニストであることにも理由があるとオディアールは続ける。
ふたりが言葉で会話できないようにしたかった。
言葉ではなくピアノでしか意思疎通できないことで、ふたりの間にある種のエロスが生まれる。
そしてもうひとつは、彼女は今までトムが強制立ち退きさせていた階級に
属する女性かもしれないということ。
彼女はフランスに到着したばかりで、お金もない、フランス語も満足に話せない。
実際にトムがそう考えたかは判らないけれど、
人生の皮肉としてそんな可能性を残したかったんだよ

とりわけ印象的なのは、トムがオーディションの前夜、
仲間との強制立ち退きの最中に傍観者と化すシーンだ。
その瞬間、トムは現在の自分と訣別する。それこそが重要なんだ。
極言すれば、その後トムがオーディションに合格しようしまいが関係ない。
トバック版では最後に父の復讐を果たすけれど、
2年後、すでに新しい世界に足を踏み出したトムには、それはできない。
もし、トムが殺人を犯したら、彼の人生はお終いだ。
僕は一歩でもトムに前進して欲しかった。
だからといって、彼は天使になったわけじゃない、ほんの少し良くなっただけさ

それにしても、“フィンガーズ”だ。
『リード・マイ・リップス』のヴァンサン・カッセルは“指だけは美しい” 粗野な男だったが、
本作でもオディアールは深夜、封印していた楽譜を引っ張り出し、
細かな書き込みを辿るトムの指を艶やかに捉える。このフェティシズム!
指だけじゃない、足もそうだね(笑)。
もちろん、美しく撮りたいと思っているから、
画面にエロティックな雰囲気が息づくのは必然だよ。
ロマン(・デュリス)には妖艶な風情がある。
彼に限らず、ヴァンサンやマチュー(・カソヴィッツ)のように
一見、男らしい人間に潜む女性らしさを引き出すのが好きなんだ。
男を女のように撮っていると思う。
『天使が隣で眠る夜』もほとんど男性の登場人物だったけれど、
それを観た妻(映画監督のマリオン・ヴェルヌ)からこう言われた。
“この映画に女性は必要ないわ。だって、彼らはみんな女っぽいもの”って(笑)」

つねに意趣に富んだタイトルを持つオディアール作品、
本作のフランス語題“De battre mon cœur s’est arêté (僕の心臓の鼓動は止まった)”は
ジャック・デュトロンの<サンタクロースの娘>からの引用だという。
その一節を鼻歌で口ずさむオディアールは意外なほどご機嫌で、終始弁舌滑らかだった。
それは監督か脚本家なのかを逡巡しつつ
今は監督しか考えられない」と明言した映画作家11年目の決意、
その自信の表われに違いない。
(キネマ旬報 NO.1440 2005年10月下旬号掲載)

●Jacques Audiard
1952年4月30日、パリ生まれ。
父は監督&脚本家のミシェル・オディアール。
脚本家として、『キリング・タイム』(87)『バルジョーで行こう!』(92)などで評価を得、
94年に『天使が隣で眠る夜』で監督デビュー、
セザール賞第1回監督作品賞を受賞したほか、ジョルジュ・サドゥール賞に輝いた。
96年の『つつましき詐欺師』ではカンヌ国際映画祭脚本賞を、
01年の『リード・マイ・リップス』では、セザール賞作品賞、監督賞など9部門にノミネートされ、
主演女優賞、脚本賞、音響賞の3部門受賞した。
本作は05年ベルリン国際映画祭で音楽賞を獲得。

●DATE
『真夜中のピアニスト』
De battre mon coeur s'est arrêté
2005年フランス映画
監督=ジャック・オディアール
出演=ロマン・デュリス、オーレ・アッティカ、リン=ダン・ファン
配給=メディア・スーツ/ハピネット・ピクチャーズ
2005年10月8日より渋谷アミューズCQNにてロードショー

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